2011 Fiscal Year Research-status Report
急性前骨髄性白血病細胞の組織浸潤機構解明による新規治療法の立案
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23650603
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
後藤 明彦 東京医科大学, 医学部, 講師 (00297293)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 急性前骨髄性白血病 / ATRA / CXCL12 / CXCR4 |
Research Abstract |
APL細胞株および初発APL細胞において発現しているケモカイン・レセプターを検討したところ、すべての細胞でCXCR4の発現が確認された。ATRA添加により24時間以内にATRA耐性のUF-1細胞を除くすべてのAPL細胞でCXCR4の発現増加を認めた。この発現増加はCXCR4のリガンドであるCXCL12に対する走化性の増強を伴っており、機能的な意義があるものと考えられた。尚、分化抗原であるCD15の発現は24時間以内では有意な発現増加を認めなかった。症例間においてATRA処理による(1)CXCR4の発現増加の割合と(2)CXCL12に対する走化性増強の割合はバラツキがあり、統計学的解析を行うと(1)(2)両者とも増加割合が多い群でATRA症候群の発症率が高かったが、(2)の方がより有意に相関していた。また、寛解導入療法期間内にATRAに加えて多剤併用化学療法の併用が必要になった群では(2)のみが有意に増加率が高かった。これらの結果は、APL細胞のCXCL12に対する走化性が、ATRA投与時のATRA症候群発症と多剤併用化学療法併用の必要性に関与していることを示唆するものと考える。CXCL12に対する走化性増加の分子的メカニズムを検討するため、各種細胞内情報伝達経路の阻害剤を用いて検討したところ、pertusis toxin、U72312によって効率的に走化性が抑制された。これはCXCL12とCXCR4のinteractionによりGiαクラスのG結合タンパクが活性化され、以後の細胞内情報伝達、特にphospholipaseCの活性化が極めて重要な役割を果たしていることが示唆される結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画でAPL細胞のケモカイン・レセプターの発現の解析、走化性の解析は完了した。CXCL12に対する走化性の分子的メカニズムの検討はまだ不十分であり、さらなる細胞内情報伝達系の解析が必要である。ただし、平成24年度に渡る項目として考えていた、走化性増加と臨床的意義の関連についての解析は予定より早く進んだので、全体としてはおおむね順調に進展していると考える。これらの平成23年度の成果については2012年3月31日~4月4日に行われたAACR(American Association for Cancer Research)の年次総会でLate-Breaking Abstractとして採択され、ポスター発表を行った(Proceedings Supplement: Late-Breaking Abstracts p168, LB-519)。
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Strategy for Future Research Activity |
ほぼ研究計画に沿い、さらに詳細な走化性の分子的メカニズムの検討を平成23年度に確立したAPL細胞株NB4を用いた走化性解析の条件下で、siRNAや各種インヒビターを用いて行う。続いて、APLモデルマウスの作成に着手。最終的にはAPLモデルマウスにおいてCXCL12に対する走化性を抑制することで、APL細胞の臓器浸潤が抑制しうるか、また、ATRAの治療効果を失わずにマウスの生存期間が延長されるか否かを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
トランスジェニックマウスの作成に70~80万円を見込んでいる。CXCL12に対する走化性の分子的メカニズム検討のためsiRNA作成およびRT-PCR用試薬、CXCR4のアンタゴニストAMD3100、および抗体などの試薬購入におよそ70万円。牛胎児血清、細胞培養用器具類、培養液などの細胞調整用資材におよそ30万円。以上合計170万円台の使用を計画している。
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