2012 Fiscal Year Annual Research Report
急性前骨髄性白血病細胞の組織浸潤機構解明による新規治療法の立案
Project/Area Number |
23650603
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
後藤 明彦 東京医科大学, 医学部, 講師 (00297293)
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Keywords | 急性前骨髄性白血病 / CXCL12 / CXCR4 / CXCR7 / 走化性 / phospholipaseC / all-trans retinoic acid |
Research Abstract |
急性前骨髄性白血病(APL)の寛解導入におけるall-trans retinoic acid (ATRA)による分化療法に伴う、APL細胞の臓器浸潤による分化症候群(DS)と末梢血への動員現象の分子生物学的病態を明らかにする目的でこの研究を行った。APL細胞株に走化因子として作用するものを検討したところケモカイン、CXCL12が最も強い走化因子であることを確認した。CXCL12の受容体CXCR4はAPL細胞にも発現しており、ATRA処理により24時間以内という早期に発現の増加を認めた。APL細胞のCXCL12に対する走化性もATRAの処理により有意に増加した。患者APL細胞でも程度は症例により様々であったが、CXCR4の発現増加とCXCL12に対する走化性増強が全例に認められた。13例というパイロット的スタディではあるが、大変興味深いことにATRA処理によるCXCR4の発現増加とCXCL12に対する走化性の増加の程度は、DSを発症した患者およびATRAに加え抗がん剤治療の併用を要した(=末梢血中のAPL細胞が増加した患者)患者で高い傾向がみられた。この傾向はCXCL12に対する走化性増加の方により顕著であった。CXCL12に対する走化性はフォスフォリパーゼCやRhoの活性化を抑制することで効率よく抑制され、これらを分子標的とすることで、DSの発症予防や抗がん剤投与を回避する可能性が示唆され、APLの寛解導入における死亡率の低下や抗がん剤による有害事象の発現回避に寄与できるのではないかと考えられた。また、近年CXCR4だけでなくCXCR7もCXCL12の受容体をして作用することが明らかにされ、この系におけるCXCR7の発現変化を検討したところ、ATRA処理によりCXCR7はむしろ発現が低下するというプレリミナリーな結果を得ており、さらにこの現象の意義を検討する予定である。
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