2012 Fiscal Year Annual Research Report
iPS細胞より誘導した樹状細胞と理想的がん抗原を利用したがんの細胞免疫療法の開発
Project/Area Number |
23650609
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
西村 泰治 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (10156119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粟井 博丈 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (10433020)
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Keywords | iPS細胞 / 樹状細胞 / がん抗原 / 腫瘍免疫 / T細胞 / がん免疫療法 |
Research Abstract |
マウスでは、がん抗原ペプチドをそのままin vivoに投与するよりも、体外でがん抗原またはがん抗原由来のペプチドを負荷、あるいはがん抗原遺伝子の導入によりがん抗原を発現させた樹状細胞(DC)を投与する方法が、がん免疫療法として有効であることが示されている。ヒトのがん治療においても、前立腺がんに対する自己DCを用いた細胞ワクチン療法の有効性が、大規模な臨床試験の結果をもとに報告されている。しかし一般的に、がん患者自身の末梢血の単球から樹状細胞を大量に調製することは困難である。そこで、我々はiPS細胞由来の血球を大量に調製し、これをDCに分化させる技術を開発した。さらに、あらかじめ大量にストックされているHLAが適合したアロiPS細胞をDCのソースとして利用できれば、患者自身よりiPS細胞を樹立する時間を短縮することができる。 このために、ヒトiPS細胞を血球に分化させた時点で、細胞増殖を促進するc-MycとBMI-1遺伝子を強制発現させてin vitroで大量に分化誘導した、ミエロイド系細胞(iPS-ML)を調製することに成功した。また、このiPS-MLより抗腫瘍効果を発揮できる、マクロファージならびに樹状細胞を大量に分化誘導できる培養条件を確立した。さらに、患者とiPSドナーとの間で予想される組織不適合性を回避する目的で、TAP2遺伝子の標的破壊によりドナーiPS細胞の内因性HLA-I分子の発現を欠き、日本人で頻度が高いHLAクラスI遺伝子を発現するiPS-MLを大量に得ることに成功した。このiPS-MLより誘導したiPS-DCは、T細胞にアロHLA-Iに対する反応を誘導しないばかりでなく、現在臨床で使用されているヒト単球由来のDCよりも、強力なT細胞刺激活性と細胞傷害性T細胞の誘導能力を有することが判明し、細胞ワクチンとして有望であると考えている。
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