2011 Fiscal Year Research-status Report
リアルタイム仮想分子生物学による食道癌の内視鏡分子イメージング診断法の開発
Project/Area Number |
23650616
|
Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
山本 博幸 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40332910)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
能正 勝彦 札幌医科大学, 医学部, 助教 (10597339)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 食道扁平上皮癌 / DNAメチル化 / MCA microarray / LINE-1 / 背景粘膜 / 粘膜内癌 |
Research Abstract |
食道扁平上皮癌および隣接非癌部粘膜、健常者正常食道粘膜におけるジェネティック、エピジェネティックな異常を解析した。 MCA microarray(MCAM)法により網羅的にCpGアイランドメチル化を解析した結果、癌部の過剰メチル化が高頻度に認められた。また、非癌部において既に中等度のメチル化が認められた事は、背景粘膜におけるエピジェネティックな変化が、食道扁平上皮癌の発症に深く関与している事を示唆すると考えられた。 また、MCAM法により新規のメチル化遺伝子の同定に成功した。同遺伝子に関して、パイロシーケンスやMSP法等を用いて詳細に解析したところ、食道扁平上皮癌細胞株において同遺伝子のメチル化と発現低下の相関を認め、また、脱メチル化剤処理による再発現を認めた。食道扁平上皮癌組織においても高頻度のメチル化を検出し、重要なことに早期の粘膜内癌の段階ですでに高頻度に発現低下を認めた。さらに興味深いことに、飲酒歴のない患者においてもメチル化が高頻度であった。 一方、ゲノムワイドなメチル化解析として、Pyrosequencing法を用いて、LINE-1のメチル化レベルを測定したところ、癌部のメチル化レベルが非癌部より有意に低い(hypomethylation)ことが示された。さらに、飲酒歴のある患者に比べ、飲酒歴のない患者で有意に癌部におけるLINE-1のメチル化レベルが低かった。 従って、食道扁平上皮癌においてCpGアイランド過剰メチル化とともにゲノムワイドな低メチル化が重要な役割をもつ事が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MCAM法により網羅的にCpGアイランドメチル化を解析した結果、背景粘膜におけるエピジェネティックな変化が、食道扁平上皮癌の発症に深く関与している事を示唆する知見を得る事ができただけなく、新規のメチル化遺伝子の同定に成功し、臨床応用が期待できる成果を得ることができた。遺伝子変異解析、microRNA発現解析などのその他の解析も順調に進展している。 食道粘膜のエピジェネティックな変化が必ずしも喫煙・飲酒によらないことが示唆され、今後さらに発癌・進展経路を解明していく上で興味深い新知見が得られた点も、本研究の目的達成に向けた大きな成果である。
|
Strategy for Future Research Activity |
順調に進展した23年度に引き続き、24年度も研究計画に基づき、研究を推し進めていく。特に有望な成果の得られたDNAメチル化異常に関して、さらに宿主側の要因等も解析し、診断法開発等の臨床応用研究を強化する。 また、ジェネティック異常、エピジェネティック異常、miRNA異常、SNP等の各研究項目の連携を強化し、研究を展開する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度は、所有している試薬消耗品を使用して研究を開始し、途中、有望な研究成果を得る事ができ、その後も研究は順調に進展した。加えて、23年度の研究成果に伴い、24年度の試薬消耗品にかかる費用が当初予算を上回ることが予想されたため、24年度に繰り越した。 24年度は、臨床応用に向け、研究項目が多岐にわたるため、繰り越し分を含め、試薬消耗品購入に使用する。
|