2011 Fiscal Year Research-status Report
カーボンナノチューブと組換えアデノウイルスによる高効率遺伝子導入法の開発
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23650623
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
武田 貞二 信州大学, 医学部附属病院, 講師 (90334896)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 直人 信州大学, 医学部, 教授 (80283258)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリー / アデノウイルス / カーボンナノチューブ |
Research Abstract |
カーボンナノチューブ(CNT)で前処理された組換えアデノウイルスが遺伝子導入効率を高めるか in vitro で検討した。CNTの中で増強効果が最も高かったCarbere-Sを処理したアデノウイルス、未処理のアデノウイルスを14種類の癌細胞株あるいは正常線維芽細胞株に感染させた。組換えアデノウイルスにはルシフェラーゼ(Luc)遺伝子が搭載されており、感染効率が高いと細胞中のLuc活性が高まることになる。また、これらの細胞におけるコクサキー・アデノウイルス受容体(CAR)のmRNA発現をRT-PCRで測定した。結果は、CARの発現が弱い細胞ほどCNTによる遺伝子導入増強効果が高かった。CARの発現が元々高い細胞ではアデノウイルス単独でもLuc活性は高く、CNT処理すると遺伝子導入効率を変化させないか、さらに増強することが判明した。従って、CNTによる増強効果はCARを介した遺伝子導入を損なうものではなかった。 感染時間で遺伝子導入効率をみると、CNT処理アデノウイルスでは短時間で遺伝子導入が効率よく行われていることが判明し、CNT処理アデノウイルスがCAR以外の系を介して遺伝子導入を行っていることを示唆した。また、CNT処理中に界面活性剤を添加すると増強効果がすべて打ち消されることがわかった。この結果はCNTによる増強効果が、CNT-アデノウイルスの複合体形成によって起こることを示唆した。 このように組換えアデノウイルスの遺伝子導入に対するCNTによる増強効果の特性とメカニズムが少しずつ解明されてきたことは非常に意義深いと考える。現在はこれまでの応用として、浮遊細胞、実験動物の組織内における効果を検討している。浮遊細胞CHO-SではCNT処理によっておよそ5倍遺伝子導入効率が高まった。また担癌マウスを使用した実験は現在進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vitro の実験が概ね完了し、CNT処理の理想的な環境設定が確立したこと、CARの発現とCNTによる増強効果の関係を明らかにできたこと、遺伝子導入増強効果のメカニズムに対してもある程度アプローチできたことなどは大きな成果であり、本研究が概ね順調に進展していることを表している。これらin vitro における研究成果をまとめて2011年の日本癌学会と2012年の日本内分泌学会に発表できたことは成果の1つである。今後は in vivo の研究成果がある程度得られれば、論文にまとめたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は in vivo の実験を中心に本研究を推進して行く。すなわちLuc遺伝子やチミジン・キナーゼ(tk)遺伝子を搭載した組換えアデノウイルスをCNT処理、未処理で担癌マウスの腫瘍内に投与し、Luc活性および抗腫瘍効果をそれぞれ測定し、CNTの遺伝子治療における増強効果を検討する。 次に、腫瘍内でのみ増殖できる制限増殖型アデノウイルスを用いて、同様にCNTの抗腫瘍効果に対する増強効果を検討する。さらに、インターロイキン12(IL12)遺伝子を搭載したアデノウイルスを用いて遠隔転移した腫瘍に対するCNTの抗腫瘍増強効果を検討する。 また、様々な浮遊細胞、血液細胞などを用いてCNT処理アデノウイルスの遺伝子導入増強効果を示し、2次元的培養細胞のみならず、3次元的培養細胞への遺伝子導入にも効果的であることを証明して、その方法を確立したい。電子顕微鏡を使った実験では、アデノウイルスをなかなか同定できないため、試料の調整方法を変えて検討したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度はマウスを用いた動物実験がメインとなる。balb-c nu/nu マウスを100匹購入するため約400,000円必要である。動物実験には大量のアデノウイルスが必要となるため、アデノウイルス大量調整用キットに約100,000円、培養用機材および培地、試薬に約150,000円使用する予定である。この他QRT-PCRキットに約200,000円、学会出張費用として約50,000円使用する予定である。
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Research Products
(1 results)