2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23651002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
杉山 慎 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (20421951)
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Keywords | 南極 / カービング氷河 / 棚氷 / 氷河流動 / GPS / ラングホブデ氷河 / 海洋 |
Research Abstract |
H25年度は、ラングホブデ氷河から第54次南極観測隊によって回収されたGPSデータを用いて、氷河流動速度の変動を解析した。極夜期間は電源供給が途絶えて欠測となったものの、2012年1月から5月までの連続データの取得に成功した。その後2012年9月から2013年1月にも測定データが得られたが、残念ながら国土地理院が近隣で運用するGPS基準局がトラブルで停止しており、この期間はGPS干渉測位が不能となった。この他、氷河下に設置したセンサによって、水圧と水温の長期観測にも成功した。 長期間にわたるGPS連続データを解析するため、最適なGPS処理ソフトウェア(RTKLIB)を選定し、データ処理時間幅の検討を行った。その結果最適と判断された15分の時間幅で、観測期間中の流動速度を算出したところ、潮汐の影響を受けた大きな流動変化が明らかとなった。流動速度は満潮から干潮への遷移期に最大となり、その変動幅は氷河末端近くで最大10倍程度である。流動変化は上流にむけて小さくなり、末端から3㎞地点での変動は数%であった。氷の鉛直変位も3㎞地点では非常に小さい値を示し、近傍に接地線が存在することを示唆してる。氷河底面の水圧は潮汐と同じ変動を示し、流動速度の変化が潮汐に起因することを強く支持するものである。また氷河下での海水温度はゆるやかな季節変動を示し、氷床底面からの突発的な排水現象は確認されなかった。 2011年度に現地で実施した観測結果と合わせて、本研究で得られた結果は、海洋の影響を受けて変動する氷河流動の詳細を明らかにし、氷床-海洋相互作用の理解を推し進めるものである。特に潮位と流動速度との複雑な関係は、溢流氷河の流動メカニズムの解明に重要な知見である。また本研究によって、南極における氷河の流動と底面環境を長期で測定する技術が開拓された。以上の成果をまとめた2つの論文が国際誌に受理された。
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Research Products
(5 results)