2012 Fiscal Year Annual Research Report
陸域水圏環境変化のプロキシ:オオクチバスと鱗の中の炭素・窒素安定同位体比
Project/Area Number |
23651010
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
張 勁 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (20301822)
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Keywords | 炭素・窒素安定同位体比 / 水圏環境指標 / オオクチバス / 鱗 / 集水域 |
Research Abstract |
本研究では,世界各地に移植されている外来生物オオクチバスを対象に,δ13C・δ15Nを用い,世界規模でのダム湖や池沼の現状と環境変化を把握するための水圏環境指標としての有効性を検証した。 対象地域は狭い範囲に標高差が3000mもあり,人為的影響がほとんどない山岳地帯を集水域に持つ河川が多い富山県とし,全域からオオクチバスが定着しているダム湖8カ所とため池2カ所を選び,オオクチバスやその餌となる魚類,湖底表層堆積物などのδ13C・δ15Nを測定した。オオクチバスでは,筋肉と鱗を測定した。これらの同位体比分析結果と,ダム湖の諸元や集水域のデータとの関連について解析した。 その結果,①オオクチバス(水域ごとに9~10個体)筋肉のδ13C・δ15Nは,各水域でまとまった値を示す一方で,水域間では異なる値を示した。各水域におけるオオクチバスのδ15Nは9‰を境として,9‰以上では丘陵域ダムや溜池であり,9‰以下では渓流域ダムであった。さらにδ13Cは,渓流域ダムの中でも湖水の年間回転率が10回/年以下では丘陵域ダムと同様にδ13Cが-23‰以下であったが,年間回転率が10回/年以上ではδ13Cが-23‰以上であり付着藻類を栄養源とする食物網と推定された。②8カ所のダム湖において,集水域の平均標高とオオクチバスの食物連鎖長との相関を求めたところ,相関係数r=-0.87と高い負の相関を示した。次に,人為的な影響が強い大谷ダム以外の7カ所のダム湖では,食物連鎖長と集水域平均標高はr=-0.87と高い負の相関を示し,さらに集水域平均標高とオオクチバスのδ15Nでは,r=-0.97と極めて高い負の相関となった。③オオクチバスの鱗と筋肉のδ13C・δ15Nは高い相関(R2=0.98)を持つことが確認でき,サンプル処理の容易なオオクチバスの鱗を用いても,水圏環境の指標になることが分かった。
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