2012 Fiscal Year Annual Research Report
量子カスケードレーザーを用いた高感度亜硝酸計測装置の開発
Project/Area Number |
23651014
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
薮下 彰啓 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70371151)
|
Keywords | ガス状亜硝酸 / 量子カスケードレーザー / キャビティーリングダウン分光 / 環境計測機器開発 / 大気化学 |
Research Abstract |
ガス状亜硝酸(HONO(g))は近紫外領域の光を吸収して、大気中の主要な酸化剤であるヒドロキシラジカルを生成する重要な前駆物質である。本研究では、キャビティーリングダウン分光法を用いたリアルタイム計測可能なHONO計測装置を開発し、二酸化窒素(NO2(g))と水溶液表面の不均一反応によるHONO生成機構についての研究を行った。 NO2(g)は水との不均一反応によりHONO(g)を生成する: 2NO2(g) + H2O(aq) → HONO(g) + NO3-(aq) + H+(aq) (R1)。この水溶液にKI、NaBr、NaClO4、フェノール、シクロヘキセンが含まれる場合に、これらの物質各々が反応(R1)に及ぼす影響について調べた。その結果、純粋な水のみの場合と比較して、NaBr、フェノール、シクロヘキセンが含まれていてもHONO(g)生成量はほとんど変化しなかったが、KIとNaClO4が含まれる場合には生成量が減少した。これらの結果より、HONO(aq)と共存物質の反応性、各種イオンの界面付近における存在しやすさ、界面付近でのイオン同士の静電的な相互作用などがHONO(g)生成に影響を及ぼしていることが明らかになった。実際のエアロゾルや海洋表面には様々な物質が含まれているため、このような共存物質の影響を考慮する必要があることを示唆している。この他、カリフォルニア工科大学と共同で、カルボン酸が反応(R1)に及ぼす影響についての研究を行った。NO2(g)の取り込み係数が純粋な水の場合がγw~10-7なのに比べ、μMからmMのカルボン酸を含む場合にはγ~10-4~10-3程度まで増加する事がわかった。このことは、2次有機エアロゾル表面で反応(R1)が促進されている事を意味し、対流圏におけるヒドロキシラジカル生成やNO2(g)消失過程に影響を及ぼしていると考えられる。
|
Research Products
(6 results)