2011 Fiscal Year Research-status Report
深海底堆積物環境におけるC1化合物分布とその微生物地球化学的循環の解明
Project/Area Number |
23651015
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷 篤史 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10335333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳川 勝紀 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (50599678)
鈴木 庸平 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00359168)
八久保 晶弘 北見工業大学, 工学部, 准教授 (50312450)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 環境分析 / 深海環境 / 地球化学 / 炭素代謝 / C1化合物 |
Research Abstract |
モノカーボン(C1)化合物を中心とした低分子有機化合物に基づいて活動する海底下微生物圏を総合的に理解するための第一歩として,既に研究が進んでいるメタンや二酸化炭素をのぞくC1化合物のうち,メタノールとホルムアルデヒドに着目し,深層の嫌気環境におけるそれらの分布を明らかにするとともに,メタノールやホルムアルデヒドを利用する微生物に関する研究を行った. 2010年に日本海上越沖ガスハイドレート調査で得られた深海堆積物,および間隙水を計測対象試料とした.間隙水に含まれるメタノールとホルムアルデヒドの鉛直分布を調べたところ,どちらも深くなるにつれて増加する傾向がみられた.海底面からの深度が約15mより深くなると,メタノールやホルムアルデヒドの濃度の増加が顕著となる一方,浅層では低濃度で,濃度変化も小さいことが明らかとなった.また,放射性同位体トレーサーを用いた微生物代謝活性測定から,硫酸塩-メタン境界にあたる深度5mからメタノール濃度上昇が始まる15mまでの領域で,微生物によってメタノールからメタンが生成されていることが確かめられた.さらに,堆積物試料から微生物DNAを抽出し,16S rRNA遺伝子を標的とした分子生態学的解析を行ったところ,微生物群集構造が鉛直的に異なっていることが示された.また,その群集構造はC1化合物鉛直プロファイルに対応して変化していることが統計学的処理から推定された.これらの結果から,C1化合物は,浅層で微生物により消費されている可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた「深層の嫌気環境におけるC1化合物の分布」に関しては,2010年に採取した試料の分析がほぼ終わり,環境中でのメタノールやホルムアルデヒドの分布と微生物活動との関係性についての知見が得られた.その結果を受け,堆積物中でのメタノール消費・生成速度を決定するために,嫌気条件下で培養実験を現在行っている.また,メタノール消費・生成に関与する微生物の同定も合わせて行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,浅-深層に至る複数の堆積物試料を嫌気条件下で培養中である.そこからC1化合物濃度の経時的モニタリングを行い,消費(生成)速度を決定する.また,同様の実験系に,微生物代謝(硫酸還元やメタン生成)阻害剤を添加し,その影響を見る.さらに,13C-メタノールを添加したトレーサー実験を実施し,気相成分の炭素安定同位体を測定することで,メタノールの消費経路を推定する.これらの実験を通して,各深度におけるC1化合物の消費(生成)メカニズムを解明したい. 平行して,C1化合物の炭素安定同位体比解析を試み,それらの起源や環境中での挙動についての知見獲得も目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため,当初の見込額と執行額は異なったが,研究計画に変更はなく,前エンドの研究費も含め,当初の予定通りの研究計画を進めていく.具体的には,C1化合物の濃度分析,同位体分析,および,微生物活性の評価を行うための物品費,ならびに打合せや研究成果発表の旅費に使用する予定である.
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