2012 Fiscal Year Annual Research Report
海洋亜表層における窒素循環の制御要因としての鉄の新たな機能
Project/Area Number |
23651017
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
武田 重信 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 教授 (20334328)
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Keywords | 海洋生態 / 海洋科学 / 地球化学 / 窒素循環 / 鉄 / 植物プランクトン / 亜硝酸塩 / 海洋亜表層 |
Research Abstract |
海洋の亜表層に出現する亜硝酸塩極大層の形成要因として、微量栄養素である鉄の欠乏に伴う植物プランクトンからの亜硝酸塩の細胞外放出の可能性を明らかにするため、2011年12月および2012年7月の白鳳丸KH-11-10、KH-12-3次航海に乗船し、西部北太平洋の2測点において深度間隔約1mの高分解能の採水を実施して、亜硝酸塩と溶存鉄濃度の鉛直分布の関係について検討した。 北緯23度の測点では、深度110m付近に見られた亜表層のクロロフィル極大層の約25m下層に亜硝酸塩極大が認められ、そのピーク位置は表層で枯渇していた硝酸塩が増え始める深度と一致していた。但し、亜硝酸塩が増え始める深度は、硝酸塩が増え始める深度よりも15mほど浅かった。160m以浅の溶存鉄濃度は概ね0.04nMと低く、植物プランクトンの鉄欠乏が細胞外への亜硝酸塩の放出要因となった可能性は高いと考えられる。 北緯40度の測点では、クロロフィル濃度の極大層が30mと浅く、90m付近まで徐々に濃度が減少するブロードな鉛直分布パターンを示した。硝酸塩と亜硝酸塩は、ともに25m付近から増加し始め、亜硝酸塩は硝酸塩躍層下部の62mで極大を示した。亜硝酸極大層は、浅層側でブロードになる鉛直分布パターンとなり、亜硝酸塩の分布とほぼ対応する形でアンモニウム塩濃度の極大も見られた。亜硝酸塩が増加していた80m以浅における溶存鉄濃度は、約0.10nMで、80-120m層の平均濃度0.24nMの半分以下の値であり、亜硝酸塩の生成に関して溶存鉄不足の関与が示唆された。一方、深度40mから60mにかけてアンモニア酸化古細菌の存在量が増加しており、亜硝酸塩の鉛直分布とも対応が見られた。従って、現場のアンモニウム塩濃度が高い場合、亜硝酸塩極大の形成には、植物プランクトンからの亜硝酸塩放出と微生物による硝化作用の両方が関わっていると思われる。
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Research Products
(3 results)