2012 Fiscal Year Research-status Report
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23651020
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Research Institution | Kochi National College of Technology |
Principal Investigator |
長門 研吉 高知工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (80237536)
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Keywords | FAIMS / エアロゾル |
Research Abstract |
研究代表者が開発したドリフトチューブ型イオン移動度/質量分析システムを用いて、ドリフトチューブをFAIMSに置き換えたFAIMS/MS測定システムの構築を行った。FAIMS分析部は英国Owlstone社製のマイクロマシニング加工によって製作された小型チップを使用した。平成24年度はFAIMSと質量分析計を接続するインターフェース部を設計、製作し、分析システムの構築を終えた。 構築したFAIMS/MSシステムの動作確認および性能評価を進めている。これらの作業には空気中で生成させた様々な組成のイオンおよびイオンクラスターを利用している。具体的には高純度空気に水蒸気、CO2、NO2などを添加し、放電または放射線の電離によって生成させたH3O+(H2O)n、O2-(H2O)n、O3-(H2O)n、CO3-(H2O)n、CO4-(H2O)n、NO2-(H2O)n、NO3-(H2O)n、などの正・負イオンを利用する。水和クラスターイオンの分布は水蒸気量を変化させて調整する。これらのイオン種は実際の大気中でも生成しているイオン種であり、FAIMS/MS測定から、大気中に存在するイオンの組成や構造の違いが、それらのイオンの移動度の電場強度依存性とどのような関係にあるのかを把握するのが目的である。目的のクラスターイオンを選択的に効率よく発生させるためにいくつかの異なるイオン発生器を用いてその特性を調べると同時に、イオン生成反応のコンピュータシミュレーションを進めた。クラスターイオンの分析はまだ進行途中であり、FAIMSによる分析結果の取りまとめはまだ終了していない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
FAIMSによる大気微粒子の分析可能性を調べる前段階として、FAIMSを利用した大気クラスターイオンの分析を進めている。これまでの通常の低電場における移動度分析と高電場を用いた移動度分析の違いを明らかにし、微粒子の移動度の電場強度依存性から導き出せる微粒子の組成情報の取得に向けて、FAIMSと大気圧イオン化質量分析装置を組み合わせた実験システムの構築を基本的に終えた。また、空気中のコロナ放電を利用したイオン発生器を整備し、本研究で分析対象としている大気イオンクラスターを発生させる部分も完成した。研究全体としては、英国Owlstone社からのFAIMSの購入の手続きに予定以上の時間を要したため、計画よりも研究の進捗状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
クラスターイオンを用いたFAIMS/MSの性能評価を進め、その後に人工的に生成した硫酸ナノ粒子の分析を行う。硫酸ナノ粒子は、SO2/H2O/Air混合ガス中で正または負極性のコロナ放電を行うことにより硫酸蒸気を発生させる。この方法ではSO2およびH2Oの濃度を調整することにより、硫酸分子クラスターやナノサイズ微粒子を作り出すことができる。実験では均一核生成により生成した無帯電のクラスターや微粒子を用いるため、イオンクラスターやイオン核生成によって生成した帯電粒子を帯電粒子捕集器を用いて取り除く。捕集器を通過した分子クラスターや微粒子をAmを用いた荷電装置を通過させてFAIMS/MSで分析する。 実験ではSO2やH2Oの濃度、添加するガスの濃度を変化させ、DMAを用いて生成したクラスターや微粒子の粒径を確認しながら、移動度が電場強度とともにどのように変化していくのかをFAIMS/MSを用いて測定する。測定データを分析することにより、FAIMSによって分離可能な成分や粒径の範囲、および最も分離効能の高い電場強度などの測定条件を明らかにし、最終的にエアロゾルの成分分析に対してFAIMSがどのように応用可能であるのかを評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究経費は、高純度空気およびSO2、NH3などの標準ガスの購入に用いる。また、有機物を含む硫酸ナノ粒子を作成するために有機物導入システムとしてマスフローコントローラや配管部品、高圧電源の購入に使用する。また国内で開催される関連の学会、研究会に参加して関連技術の調査を引き続き進めると同時に、研究成果の発表も行う。旅費はそのために使用する。
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