2011 Fiscal Year Research-status Report
小流量・小型軽量ナノ粒子リスクリアルタイムモニタリング技術の開発
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23651024
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古内 正美 金沢大学, 環境デザイン学系, 教授 (70165463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大谷 吉生 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (10152175)
畑 光彦 金沢大学, 環境デザイン学系, 助教 (00334756)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 個人曝露 / 環境ナノ粒子 / エアロゾル / 慣性フィルタ / 作業環境 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
1.装置開発・改良小流量(0.1~2L/min)でナノ粒子分級を実現するには,従来の綿状金属繊維を充填した構造では安定した性能を発揮することが困難なことを考慮し,以下の新しい構造の慣性フィルタを検討した。1)微細金属格子を積層させた均一構造を持つシングルノズル慣性フィルタ:TEMグリッドと円孔スペーサを交互積層した分級径100nmを持つ慣性フィルタ,2)大断面金属メッシュと複数の小円孔を持つスペーサを交互積層したマルチノズル慣性フィルタ,3)1),2)の慣性フィルタと粉塵負荷影響低減と粒子反発抑制のための綿状繊維層の複合化。1)~3)を検討した結果,格子繊維への粘着剤塗布による粒子反発抑制と3)の複合化で,0.7~5L/minの範囲で,ほぼ理想的な分級特性の少流量慣性フィルタを実現した。さらに,2)の構造について,製作の容易さを考慮して比較的大流量の慣性フィルタを試作・評価し,実用的な分級特性を持つ複合構造型マルチノズル慣性フィルタを実現した。また,十分な性能を持つ0.7L/min用慣性フィルタの実現で,ナノ粒子個数濃度オンラインモニター用に想定する携帯型CPC(吸引流量0.7L/min)による曝露モニターの準備が整った。2.実態調査・評価1.5L/min用の新ナノ粒子モニターを設計すると伴に,1で開発した新タイプの慣性フィルタを持つパーソナル・ナノサンプラ(4~6L/min)のフィールド試験で実用上の問題点を確認し,装置と評価方法の妥当性を検証した。この結果,十分な性能を持つ一方,金属メッシュ積層型慣性フィルタの採用で,小型化の余地が大きくなったこと等を明らかにした。なお,実態調査は,タイ・バンコク,ハジャイ,カンボジア・プノンペンの比較的高濃度の都市生活環境下と金沢市内で実施し,都市生活環境中で曝露されるナノ粒子はディーゼル起源の粒子が卓越していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ターゲット流量の0.1~2L/minに対し,新しい構造の金属メッシュ積層型慣性フィルタを使うことで0.7~6L/minの範囲で実用上十分な性能を発揮することを示した点で,目標の大部分を達成できている。また,マルチノズル化したメッシュ積層構造の慣性フィルタでシングルノズルから19ノズル(20~580L/min)の範囲で流量制御可能なことも確認し,これを小流量にも適用することで非常にダイナミックレンジの広い低圧損ナノ粒子分級モニタリング技術を実現できる可能性を示した。また,小径メッシュ積層シングルノズル型,大断面メッシュ積層マルチノズル型の開発により,より薄型軽量のナノ粒子分級装置の可能性が示された。さらにこれらの慣性フィルタ構造に関して特許申請を行った(2件)。アジア各国での調査を含むフィールド調査で,生活環境中の曝露ナノ粒子が国によらずに鎖状構造を持つディーゼル排気粒子が卓越するなどの新しい知見を得た。一方,さらなる小流量化(~0.1L/min) によって,ナノ粒子中化学成分(ブラックカーボン)のオンラインモニタリングが可能になることが期待されるが,本年度は0.15L/minについては,予備的検討に留まった。また,0.7L/minの慣性フィルタを装着した装置によるオンラインモニタリングを行うまでに至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.装置改良と性能評価:前年度の検討で十分な初期性能を発揮する慣性フィルタが開発されたので,今後は,実用上重要となる以下の検討を行う。1)粉塵負荷に伴う圧損増加と粒子分級特性の評価、および最適なWeb状繊維充填層の設定条件の検討,2)メッシュ積層シングルノズルとメッシュ積層マルチノズルを用いた,より薄型・軽量の評価装置の開発,3)0.7L/minの慣性フィルタを個数計数器(CPC)に装着したオンラインナノ粒子モニターの試作とフィールド試験,4)0.15L/minの慣性フィルタの最適化とこれを装着したナノ粒子成分オンラインモニタリング装置の開発2.権利申請,商品化検討:企業の協力を得て,すでに前年度に特許申請(2件)を行っており、これに基づいて装置開発企業との連携も進んでいる。次年度は,装置の商品化を計画している。3.実態調査・評価:前年度の結果をさらに広げ,新構造慣性フィルタを装着したCPC,個人曝露評価装置を用いて作業環境を含むフィールドデータを蓄積する。また,化学物質濃度や尿中代謝物等を調査し,ナノ粒子の健康リスクを評価するとともに,評価のためのプロトコルを作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品(粒子捕集用フィルタ、慣性フィルタ、試薬等)(800千円)と旅費・謝金(400千円)が主体になる。分担者の大谷の予算が23年度執行されなかったのは、平成23年度は、オンラインモニタリングを含むリスク評価にまで至らなかったためで、主に化学分析費用分による。24年度はこれを実施予定であり、23年度分の繰り越し額を上乗せして予算配分する。
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Research Products
(2 results)