2011 Fiscal Year Research-status Report
自然エネルギーの利活用に関する,価値評価に基づく「当事者性」の獲得要因
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23651038
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
湯崎 真梨子 和歌山大学, 地域創造支援機構, 特任教授 (50516854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 敦司 和歌山大学, システム工学部, 教授 (90283960)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 自然エネルギー利活用 / エネルギーの自給自足 / 当事者性 / CVM / 内発的発展 / 小水力発電 / 主体形成 |
Research Abstract |
本研究は,地域に豊富に安定的に賦存する自然エネルギーの利活用と地域の主体的かつ継続的な地域振興(内発的発展)との関係を明らかにするものである。自然環境維持と地域社会維持に対して,ボトムアップ型に働きかける主体形成を促進し定着させるための「当事者性」の獲得要因を明らかにすることを目的としている。平成23年度は,当初計画1)の「エコロジカルな地域づくりが,住民主体で成立し促進するための諸要件の検証」として,地域で主体的に自然エネルギーの利活用ができる人材育成のため「低炭素技術の活用に対するスキルアップ講座(全6回)」を開催した。これは一定の受講者を本研究の被験者として,講座前,講座の各段階において同様質問のインタビューによる意識調査と行動観察を行い,被験者らの,自然エネルギー利活用に関する当事者性獲得要因を探った。 講座内容は,(1)低炭素社会の構築に対する理論,(2)具体的な計画構想力,(3)自然エネルギーの利活用に関連する社会技術(計画,設置/施工,運用,補修,施策知識など)の習得,(4)各種法律,手続きの基礎を習得,(5)地域内での人的ネットワークの構築を目的とし,和歌山県那智勝浦町市野々地区や古座川町平井地区に既に設置した水車型小水力発電装置やバイオマス利用コンロを足がかりに,被験者らが自ら自然エネルギーによる発電装置を作製し,導入への行動(自治体,地域との折衝,場所の選定など)までを実施体験することで獲得する「当事者性」に対する意識変化を探った。 本研究フィールドの和歌山県紀南地域は,平成23年9月の台風12号で甚大な被害を受けた。これに関連して,災害時には孤立集落になる可能性がある山村,古座川町平井地区の住民に対し,災害時のエネルギー途絶不安に対するインタビュー調査を行った。これについては自然エネルギー導入に対する住民の主体形成との関連性を探るために今後研究継続をしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主たる実証フィールドは和歌山県南部の那智勝浦町,古座川町,田辺市であるが,平成23年9月上旬に紀伊半島を襲来した台風12号により当地は大規模な土石流,河川の氾濫により大災害を受け,現地での実証研究が実行できない状況となった。那智勝浦町市野々小学校敷地内にすでに設置していた小水力発電装置は那智川の氾濫により土石に埋まり,また市野々地区は山の深層崩壊により壊滅状態となり,市野々小学校もいまだ再開のめどは立っていない。同じく実験予定地であった那智勝浦町高津気地区,太田地区,色川地区も多大な被害を受けた。これらの地区では小水力など自然エネルギー導入実験および導入をきっかけとして地域内,地域外住民意識の変化を測定する予定であったが,以上の理由から計画を中断・延期するに至った。古座川地区も同様である。町の復興は徐々に進んでいるが,被災した住民感情を考慮し,23年中の現地実験は控えた。しかし,9月の台風災害以前の研究および,台風被害が比較的少なかった田辺市や串本町で研究を継続することができ,今回の報告に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
・平成24年度の計画1) 「エコロジカルな地域づくりが,住民主体で成立し,促進するための諸要件の検証」について,CVM(仮想評価法)による価値評価(地域住民)を行う。2) 「内発的な住民活動が発展的に駆動するための外部要因の検証」について,Webアンケートによる消費者の意識調査(都市住民)を行う。3) 「自然エネルギーを利活用した,エコロジカルな地域づくりへの住民主導による取り組み実験」については,那智勝浦町,古座川町などで行う。また2)については2000人規模のWebアンケートを今年度前期,後期の2度実施する予定である。さらにこれまでの研究の中間とりまとめとして論文など執筆に取り掛かる。・推進方法学内での共同研究者,北大研究林,那智勝浦町,古座川町など行政,地域住民,NPO,県外知見者などと協力する研究プロジェクトと並行しながら本研究を推進していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では,住民のインタビュー調査によるCVM評価が大きな比重を占めている。インタビューは,いずれも和歌山県の南部に位置して,実験の主たる地域である那智勝浦町と同様に水資源が豊富で限界集落を持つ古座川町を予定している。平成23年9月上旬に紀伊半島を襲来した台風12号により県南部は大規模な土石流,河川の氾濫により大災害を受け,現地での実証研究が実行できない状況となった。そのため初年度の研究計画にやや遅れが生じたが,平成24年度には,その遅れを取り戻しつつ2年目の研究も速やかに遂行する。台風12号により実験地の変更を余儀なくされているが,現地の復興状況を考慮しながら,可能であれば都市近郊農村での調査も視野に入れたい。平成24年度はプログラムの進行段階での調査,社会実験のための住民説明会などのため,那智勝浦町には5回,古座川町には5回,その他田辺市などへは3回程度の旅費が必要である。さらに2000人規模のWebアンケートを2回行うため,この費用も必要である。また,小水力エネルギーを活用したバッテリー充電による観光利用や農作業補助実験など,現地との調整のうえ実施する計画であるので,このための諸経費が必要である。また,研究の中間とりまとめとして論文誌などに公表予定のためこの費用も計画している。最終年度の平成25年には,研究の結果を,環境学系,社会学系の論文誌に発表をする予定なので,投稿費,抜き刷り費が必要である。また,広く成果の共有と公表をはかるために報告書を作成するので,この費用も計画している。
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