2012 Fiscal Year Research-status Report
自然エネルギーの利活用に関する,価値評価に基づく「当事者性」の獲得要因
Project/Area Number |
23651038
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
湯崎 真梨子 和歌山大学, 地域創造支援機構, 特任教授 (50516854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 敦司 和歌山大学, システム工学部, 教授 (90283960)
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Keywords | 自然エネルギー利活用 / エネルギーの自給自足 / 当事者性 / 内発的発展 / 主体形成 / 地域資源 |
Research Abstract |
本研究は,和歌山県の熊野地方を主たるフィールドに,地域に賦存する自然エネルギーの利活用と地域の主体的かつ継続的な内発的発展との関係を明らかにするものである。エコロジカルな地域づくり活動が住民主体で成立するための諸要件の検証として,主として以下の3点の取り組みを行った。 ①昨年度に引き続き,地域で自然エネルギーの利活用ができる「技術と意識を持った」人材の育成のための講座を,今年度は地域団体と共同で開催した。共同開催したのは,那智勝浦町のNPOや住民らによる組織で,当該町は2011年9月の大規模台風における土砂災害による甚大な被災地であり,その時の教訓をふまえ,自然エネルギーやエコロジカルな社会に対する住民の自発的な学習要求から,この共同開催に至った。24年度は全5回の講座と特に災害と森林資源との関係をテーマに災害現場などの実施調査を住民と共同で行った。 ②同町の中山間地の集落では,古い水車小屋と水車を再生する取り組みを年間を通じて行った。この活動はIターン者である若者と地域の工務店らにより行われたが,この取り組みに対する集落内での古くからの住民の反応について観察調査を行った。 ③都市近郊農村でソーラー発電と農業生産が両立するソーラーシェアリングの実証実験の準備に取りかかった。実験地となる和歌山県海南市郊外の農地で,農園主,設置施工事業者らとの共同研究を開始した。 また,これまでの研究成果として,論文を日本地域政策学会に発表した。また環境社会学会で口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主たる実証フィールドである和歌山県那智勝浦町は,平成23年9月の台風12号により甚大な被害を受け,その復興はまだまだ十分にされていない状況のため,計画の修正を行った。24年度は当初計画の,住民参加型の実証実験の形式を変更し,特に災害に関連した自然資源の調査などを行った。しかし,内容的には,本研究の基礎となる地域調査を十分にできた。
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Strategy for Future Research Activity |
主たる実験地である那智勝浦町市野々小学校が25年4月に再開となり,やや計画の遅れはあるものの,この地を象徴的に拠点とした住民の内発的な動態調査に取り掛かる計画である。また,同町の中山間地である高津気集落では,本研究で再生した水車小屋の水車をシンボルとして,この地で地域資源を利活用する能力を持った若者の人材育成を行い,(「農と食の学校」開催予定)こうした活動が集落全体に与える影響調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は,住民主体のエコロロジカルな社会実験やこれらに関するインタビュー調査が大きな比重を占めているため,実験対象地である那智勝浦町や古座川町に,共同研究者も含めると合計20回程度の旅費が必要である。また,Webアンケートによる都市住民などへの意識調査を実施するため,その費用が必要である。さらにデータの集計や分析に対する労務費,および環境学系,社会学系への論文誌への成果発表として論文掲載費,別刷り費が必要である。また広く成果の共有と公表をはかるための報告書,および報告会開催費用も計画している。
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