2012 Fiscal Year Research-status Report
気候変動に対する適応策としてのWater Democracyの再構築に関する研究
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23651041
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
吉永 健治 東洋大学, 国際地域学部, 教授 (40392576)
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Keywords | 水管理 / 水管理組織 / 灌漑・農業用水 / 効率的水利用 / Water Democracy / 気候変動と適応策 |
Research Abstract |
平成24年度は、水管理と水管理組合の活動に関する現地調査を中心に実施した。対象国としてラオス、タイ(8月)、スリランカ(12月)、台湾(25年2月)を訪問しアンケート調査と聞き取り調査を実施した。24年度の研究内容と成果は以下のとおりである。 1.ラオスで2灌漑地区の農民を対象にアンケート調査を実施した。対象者は2地区で約55名、またラオスでは灌漑局、FAO、ラオス大学、タイではFAO、チュラロンコン大学、カセサート大学、タマサート大学、アジア工科大学などを訪問し水管理に関して意見交換を実施した。ラオスの水管理組織はフィリピンやタイに比較すると小規模で農民の水管理に対する意識も低いことが指摘できる。 2.スリランカではマハベリ灌漑地区の農民約50名を対象に同じ内容のアンケート調査を実施した。併せて、農業局、国際水管理研究所(IWMI)、ペラデニア大学、マハベリ灌漑局などを訪問し、水管理に関する情報収集と議論を行った。 3.さらに、台湾においては主に農田水利会、研究所、台湾大学、台北大学などを訪問し、水管理組織に関する組織活動の変遷に関して情報収集と議論を行った。特に、都市近郊の農田水利会は農地の多用途転用などから得た巨額の資産を保有し、水管理組織としての性格が変容しつつある。 4.アンケート調査の結果については、昨年実施したフィリピンの結果と今回実施したラオスの結果を統計的に分析し、学部紀要に投稿し、一般公表した。また、本研究に関する研究結果を大学院紀要及び学部紀要に投稿し、計3篇の論文を公開した。さらに、スリランカにおける国際水管理研究所や台湾における台湾研究所(TRI)ではValuing Water for Better Water Managementを課題にプレゼンを行い、議論と意見交換を実施した。なお、スリランカのアンケート調査については25年度に分析することとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23,24年度においては、研究計画に従い、フィリピン、タイ、ラオス、スリランカ、台湾で現地調査を実施した。このうち、フィリピン、ラオス、スリランカでは灌漑地区における受益農民を対象に水管理の実態、水管理組織の活動を中心にアンケート調査を実施した。また、各国の水管理に関連する政府機関、大学、研究機関、FAO等の国連機関、ADBや世銀などの国際機関を訪問し、水管理担当者および気候変動担当者からの聞き取りと研究課題に関連した議論を実施した。こうした現地調査の結果をもとに統計処理・分析など行い、水管理の実態と水管理組織活動に関する実態と変化、変化の理由などについて明らかにした。また、理論分析としてゲーム理論とプリンシパルーエージェント理論を中心に水管理に対する水管理組織の役割などについて分析を行った。分析の結果は、平成23年12月インドネシア・ボゴールで開催されたOECD/ADB主催によるWorkshop:Better Water Management for Food Securityで発表した。また、平成24年度には、研究成果を取りまとめ、東洋大学の大学院紀要および学部紀要に合計3編の論文を投稿し、一般公開を行った。さらに、スリランカの国際水管理研究所(IWMI)、台湾の台湾研究所(TRI)などでは担当者を対象に研究課題に関連したプレゼンを行い、議論と意見交換を実施した。 以上のように、平成23、24年における研究の進捗、研究成果の達成ともほぼ順調といえる。ただし、効率的で民主的な水管理、すなわちWater Democracyと気候変動の適応策との関係については最終年度の課題として実施することとしている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は3年計画で実施しており、すでに2年間の研究を実施し、当初研究計画に沿って、所定の成果の達成および成果の取りまとめを行い、論文として公表してきたところである。最終年度の平成25年度においては以下の研究課題を推進し、研究成果の達成を期する。 1.過去2年間に実施したアンケート調査結果を精査し、特に水管理組織の活動の低下の原因とそれに伴う水管理の実施への影響について分析する。 2.Water Democracyによる水管理と国連によるIWRM(総合的水資源管理)との関連性を考察し、IWRMの実施に対する提言を行う。 3.ローカル・レベル、すなわち灌漑システム・レベルにおける効率的な水管理の実践が気候変動に対する適用策として、いかに有効かについて考察する。 4.最後に、3年間の研究成果について取りまとめを行い、論文として公表する。また、機会を見て調査国における関係機関等で成果の発表を行う。 最終年度である平成25年度は、以上の課題を中心に研究活動を促進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度の平成25年度における研究費は、以下のような項目に計画的に使用することとする。 1.インドネシアを対象に現地調査を実施する(可能であればアンケート調査を実施する)。 2.補足調査として、フィリピンのUPRIIS灌漑地区で農家に対する聞き取り調査を行う。また、成果の一部をNIA(国家灌漑庁)においてプレゼンを予定する(または、国際的なワークショップやセミナーで公表する)。 3.日本における土地改良区を対象に調査を実施する。 4.その他文献の購入、調査車両借り上げ等への支出を見込む。 以上の項目に対して研究費の適正な使途を行う。
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Research Products
(4 results)