2012 Fiscal Year Annual Research Report
三次元培養ヒト甲状腺未分化細胞による定量的放射線発がん系の樹立
Project/Area Number |
23651048
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
鈴木 啓司 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (00196809)
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Keywords | 放射線 / 甲状腺 / 発がん |
Research Abstract |
甲状腺未分化細胞を用いて、定量的な放射線発がん実験系を確立するために、細胞生物学的な性格付けが終わったのを受け、今年度はまず放射線に対する感受性を検討した。スフェロイドの状態で培養維持した細胞に、137Csを線源とするγ線を照射し、照射後に細胞を単個細胞に分離し、コロニー形成法によって生存率を求めた。その結果、大半の正常ヒト二倍体細胞の放射線感受性と同等の感受性を示すことが明らかになった。次に、放射線による癌細胞を誘導を定量的に評価するために、フォーカスアッセイ法の確立をめざした。フォーカスアッセイは、細胞を中密度に播種して培養し、高密度になる過程で異常に増殖した細胞の集団がフォーカスを形成するのを検出する手法である。このため、細胞培養を有る程度低い濃度の血清で行う必要があり、その濃度決定をまず行った。牛胎児血清を、1%~5%までの濃度で変化させ、4週間の培養の間にどの程度細胞の密度が上昇するかを検討した。その結果、3%の血清濃度ががん化していない細胞の増殖を適度に抑制し、一方で、癌細胞の増殖を適度に支持することがわかった。そこで、放射線照射後の細胞を、3%血清濃度中で4週間培養し、フォーカス形成が認められるかどうかを検討した。その結果、高線量の放射線により、微少ながらフォーカスを形成する細胞の出現を認めた。フォーカス形成細胞をクローニングし、増殖させたところ、細胞形態や細胞増殖に顕著な悪性度は認められなかったことから、これらのフォーカス形成細胞は、放射線発がんの初期の段階にあると予想された。
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