2013 Fiscal Year Annual Research Report
X染色体を中心とした新たな化学物質毒性メカニズムの体系化と影響評価システムの構築
Project/Area Number |
23651054
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Research Institution | Ohu University |
Principal Investigator |
熊本 隆之 奥羽大学, 薬学部, 助教 (00433558)
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Keywords | X染色体不活性化 / 化学物質影響 / DOHaD |
Research Abstract |
X染色体の活性は胎生期でXist遺伝子に制御されるが、X連鎖遺伝子は脳神経系や雄性生殖系など広範に作用することから化学物質に対する脆弱性が高いと推察される。これまでディーゼル排ガス胎生期曝露がXistとそのアンチセンスであるTsixの発現を曝露濃度依存的に上昇させることを見出していた。今回、ビスフェノールA胎生期曝露で成長後の大脳部位で有意なXistの発現減少とTsixの発現上昇を認め、さらにX連鎖性の脳発達に重要な遺伝子であるFmr1、Nlgn3、Pak3、Gdi1が総じて減少、既知の行動異常等の要因となりうることを示した。またDNAメチル化解析を行ったが変化は限定的であり、影響機序はノンコーディングRNAとして機能するXistとTsixのRNAレベルでの変化が重要であることが示唆された。加えて雄性生殖機能への影響を検討、精巣重量やAGD、精子産生量の変化に加え、精巣でXistとTsixが共に減少したがX連鎖性遺伝子群の変動は限定的であった。 続いてベンゾaピレンの胎生期曝露を実施、若年齢の大脳部位でXist、Nlgn3、Ophn1の有意な発現減少を認めた。7週齢ではTsixの減少、Pak3、Gdi1の上昇を認めた。雄性生殖機能へは精巣重量や精子産生量の減少、AGD短縮等の影響に加え、XistおよびTaf2q、Tex11、Tex13、Nxf2、Fthl17、Usp26等のX連鎖性の雄性生殖発達に重要な遺伝子の有意な発現減少を認め関連性が考えられた。 以上より、XistとTsixの変化の方向性が脳と雄性生殖発達を含む多くのX連鎖遺伝子群の発現調節に重要であるという知見が得られ、生体影響評価システムへの応用可能性が示された。X染色体を介した影響は化学物質の新たな毒性機構を提示することに加え、胎生期に確立されることから胎生期化学物質曝露の成長後影響の一因となりうることが示唆された。
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Research Products
(3 results)