2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヒ素毒性の新しいメディエーターとしてのS100A8/A9タンパク質
Project/Area Number |
23651056
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
姫野 誠一郎 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (20181117)
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Keywords | ヒ素 / S100A8 / S100A9 / 免疫機能 / 炎症 |
Research Abstract |
バングラデシュなどアジアの各地域で地下水からのヒ素摂取によって健康障害が生じている。本研究では、ヒ素中毒の症状(免疫能のかく乱、血管障害、多臓器発がん)に炎症性タンパク質のS100A8/A9が関与しているのではないか、と考えて検討を行った。初年度は細胞レベルにおいて、ヒ素添加によってS100A9の遺伝子発現が誘導される過程にストレス応答転写因子の一つであるNrf2が関与していることを明らかにした。 本年度は、バングラデシュのヒ素汚染地域の共同研究者から供与された人血清サンプルを用いてS100A8/A9のレベルを測定した。その結果、S100A8、および、S100A9のいずれも、既報の正常値に比べて、ヒ素汚染地域では極めて高いレベルであることがわかった。また、S100A8とS100A9の測定値の間には非常に高い相関が認められたことから、ヒ素によって両者が共通の機構によって誘導されているものと予測された。そこで、ヒ素曝露の指標として、毛髪中ヒ素濃度、あるいは、爪中ヒ素濃度を用い、血清中S100A8、S100A9との相関を調べたが、あまり高い相関は得られなかった。その理由として、今回使用した人体試料にヒ素汚染を受けていない対照群が含まれていなかったため、すべてのヒ素曝露群においてS100A8/A9の値が著しく上昇していたことが影響している可能性がある。 本研究により、ヒ素が細胞レベルでS100A8/A9を誘導すること、ヒト血清サンプルにおいても、ヒ素汚染地域ではS100A8/A9レベルが極めて高いことが明らかにされた。今後、ヒ素汚染地域から血清サンプルをさらに多く採取し、S100A8/A9と他の炎症のバイオマーカーとの比較などを行う価値があると考えられる。萌芽研究として、今後の研究の展開につながる成果が得られた。
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Research Products
(4 results)