2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒートアイランド現象緩和に係わる建築物全面緑化のための自立型栽培担体の開発
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23651062
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小川 幸春 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (00373126)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 環境技術 / 環境対応 / 人間生活環境 / 建築物緑化 / 高分子構造・物性 |
Research Abstract |
都市部のヒートアイランド現象緩和には,植物による建築物の緑化が有効とされる.ただし現状の緑化技術では,植生土台の限界やメンテナンスの困難さなどから,既存の建築物特に高層建築物への適用が困難である.本研究は高層建築物の丸ごと緑化などを容易に実現するための自立型栽培用担体の開発を目的とする.具体的には,物質吸着・保水性のあるゲル状物質積層体を土壌の代替として植物の栽培担体とし,ロープ状に成形加工することで建築物を丸ごと包む技術の確立,開発を目指している. 平成24年度は,土壌の代替となるゲル状物質の施肥栄養素に対する保持,浸透特性を調査し,異なるゲル素材を積層化した際の効果を検討した.【材料および方法】ゲル化剤として寒天粉末を用いた.寒天に脱イオン水を加え,加熱・凝固させた.寒天濃度は3.0,6.0および9.0 %(w/v)に調製した.放冷後一辺2cmの立方体に成形してゲル試料とした.試料の底面が5%KCl溶液に接するよう設置し,0.5,1,4,8および12時間放置した.その後,原子吸光光度計を用いてゲル試料中のカリウム含有量を測定し,寒天濃度とカリウムの浸透速度の関係を求めた.【結果および考察】試料設置後4時間まではいずれの試料もカリウム含有量の増加が見られた.4時間以降の試料中カリウム濃度は約9mg/100gで一定となったが,カリウムの浸透速度に大きな差異は確認されなかった.これは寒天内部の網目構造がカリウムの原子半径(227pm)より十分に大きいためであると推察される.一方,設定した濃度範囲におけるゲル試料の硬さは直線的に上昇する傾向を示した.すなわち,ゲル試料の濃度を調節することで材料強度を向上させ得るが,養分の浸透程度には関与しないことが示された.次年度以降は,ゲル試料の構造観察,陽イオン補足性物質の添加による浸透速度調節を検討する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度はゲル化材としてグルコマンナンを,また吸水性ポリマーとしてポリアクリル酸の利用を計画していたが震災の影響によって材料の入手が困難となり,一般に利用される寒天で検討するだけにとどまった.このため,異なる特性を持つゲル素材の積層体作製に遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
ゲル素材積層体の作製を検討するとともに,得られたゲル試料に植物種子を埋め込んで発芽実験を行う.施肥栄養素には市販の液化肥料原液を用いる.ゲル素材積層体の構造設計には特に注力する.なお栽培担体自体のロープ化は最終年度の検討事項とし,次年度は既成のロープで栽培担体を補強した状態を想定して研究を進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
材料の入手困難や年度末における未使用見込額報告の早期化に伴い,当該年度の未使用研究費が生じた.このため該当する額(13,565円)を次年度使用額とした.次年度以降の研究費使用計画については,上述の次年度使用額を含めて主に試薬,ガラス器具等の消耗品購入費に充当させる.具体的には,実験で必要となる多種類のゲル素材,ゲル化調製のための試薬,ガラス製実験器具等の購入費である.さらに実験データ整理のために人件費の支出も計画している.
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