2011 Fiscal Year Research-status Report
糸状緑藻の優占化機構の解明とこれを利用した大気開放系での水処理と物質生産の両立
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23651064
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
下ヶ橋 雅樹 国立保健医療科学院, その他部局等, その他 (20334360)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 糸状緑藻 / 水処理 / バイオマス |
Research Abstract |
本研究は,生育が容易であり,かつバイオマス生産量も高い大型の糸状緑藻の優占化力に注目し,その優占化メカニズムを解明しつつ,この機能を工学的に活かした開放系での水処理・物質生産プロセスを開発するものである.さらにその提案プロセスの栄養塩除去能力とあわせて,ここで得られる藻体の資源化の可能性を明らかとするものである.藻類の資源化を考える上でその物質生産ポテンシャルを把握することは重要である.本年度は,環境中に存在する糸状緑藻群落を対象に,代表的なバイオ燃料生産プロセスであるバイオエタノール,およびメタン,ならびに各種化学原料となりうる糖類を想定し,その生産ポテンシャルを把握した.結果として,農業排水路から採取した糸状緑藻群落を硫酸処理した場合,乾燥重量1 gあたり,0.2 gのグルコースが得られた.また,メタン発酵を実施した際には,1ヶ月間の発酵により1 gのVolatile Solid(VS)あたり約0.75 Lのメタンが生成することがわかった.また水処理能力に関しては,屋外において,糸状緑藻を生育させた実験水路(藻類培養部長さ250cm,幅26cm,水深14~22cm)を作成し,化学肥料から作成した模擬農業排水を負荷して,各態の窒素,リン濃度や水温を経時的に測定することで,冬季の栄養塩除去能力の評価を行った.また,これらの観察結果をもとに,糸状緑藻優占化水路における栄養塩挙動を示す数理モデルの予備的な構築を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の1つである,糸状緑藻を用いた水処理・物質生産プロセスの開発に関しては,構造体の糖類やメタン発酵特性の測定を通じてバイオ燃料原料としてのポテンシャルを,屋外栄養塩取り込み実験を通じて水処理プロセスとしての可能性を示すことができた.一方の優占化メカニズムに関しては,現在,藻類の室内培養を実施しており,今後,様々な影響因子と優占化の関係を明らかとしてゆく.また,数理モデルに関しても予備的なモデル構築を行っている.以上のことから,研究はおおむね順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
特に開放系での優占的生育性の確認や水処理能力の評価を本研究の要と考え,室内実験による優占化過程の解明に注力するとともに,屋外実験結果を踏まえた数理シミュレーションモデルの構築を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
藻類培養実験に関連する消耗品,屋外実験に要する消耗品や旅費,数理モデル化に関するパソコンソフトウェアや消耗品,データ,情報収集や研究成果公開のための国内学会や海外学会への参加に要する旅費・参加費,研究打ち合わせに要する旅費,英文投稿論文のための校閲費用,投稿費用,報告書の印刷費を使用する予定である.
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Research Products
(2 results)