2012 Fiscal Year Research-status Report
天然ガスからの化学品製造における消費エネルギーの80%削減に向けた新技術の開発
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23651069
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
水嶋 生智 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60239233)
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Keywords | メタン部分酸化 / モリブデン触媒 |
Research Abstract |
メタンの部分酸化によるメタノール・ホルムアルデヒドの直接合成プロセス用触媒の開発について以下の研究成果を得た。 (1)超安定化Y型ゼオライト(USY)内包型ケイモリブデン酸(SMA)触媒の合成 USYのスーパーケージ内への触媒活性種(SMA)の導入量を増加するため、平成23年度から継続して合成条件の検討を行った。出発原料や調製方法を変えて合成を試みたが、SMA導入量は理論最大値(約14wt%)の1割を超えることもできず、十分なメタノール・ホルムアルデヒド収率を得るには至らなかった。 (2)微結晶USYの合成 上記の問題を解決し、反応に寄与するSMA分子数を増加させるには、USYの微結晶化が有効と考えられる。平成23年度には目標とする10 nm程度のY型ゼオライト微結晶の合成に成功したので、平成24年度では合成したゼオライトを脱アルミニウム処理によりUSY化する方法を検討した。通常使用されている水蒸気処理ではゼオライト構造が崩壊したため、四塩化ケイ素処理に変更したところ、結晶構造の一部崩壊は認められるものの、微結晶USYを得ることができた。現在、この微結晶USYのスーパーケージ内にSMA分子を合成する方法を検討中である。 (3)中空シリカ内包型SMA触媒の合成 平成23年度にメタン部分酸化反応に対する中空シリカ内包型SMA触媒の有効性が確認できた。この触媒は微細なSMA粒子を薄いシリカ膜でカプセル化した構造となっている。反応ガスはシリカの細孔を通過して内部のSMA上で反応するので、シリカの膜厚や細孔特性の制御が重要と考えられる。平成24年度は、使用する溶媒、シリカ源、界面活性剤、溶液組成、反応条件、等を変えて合成を試み、シリカの膜厚や細孔特性、SMA濃度、等の異なる触媒を調製することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)超安定化Y型ゼオライト(USY)内包型ケイモリブデン酸(SMA)触媒の合成 SMA分子はUSYの細孔径よりも大きく、USYのスーパーケージ内に直接導入することはできないので、小さなMo前駆体を導入した後、スーパーケージ内でSMA分子を合成する必要がある。当初計画では、Mo前駆体や調製条件を最適化すればMo導入量を増加できるものと考えたが、実際には理論最大値(約14wt%)の10%以上にすることは困難であった。これは合成に使用した市販のUSY結晶が大きく、結晶内部までMo前駆体が侵入できなかったことが一因と考えらえる。今後は、下記の微結晶USYを用いて触媒を合成する。 (2)微結晶USYの合成 USYはY型ゼオライト骨格中からアルミニウムを除去することにより得られる。平成23年度にY型ゼオライト微結晶を合成できたので、現在は脱アルミニウムによるUSY化を検討している。初めは脱アルミニウム法として一般に用いられている水蒸気処理法を検討したが、微結晶ではゼオライト骨格が完全に壊れてしまうことが明らかとなった。そこで、四塩化ケイ素処理に変えたところ、結晶の一部崩壊が認められるものの微結晶USYの合成に成功した。当初の予定よりも若干遅れているが、研究は順調に進んでいる。 (3)中空シリカ内包型SMA触媒の合成 当初計画にはなかったが、平成23年度に試験的に合成、性能評価を行ったところ、USY内包型SMA触媒と同等の効果が確認できた。触媒性能に影響すると考えられる、シリカの膜厚や細孔特性、SMA濃度、等の制御に成功したので、今後反応試験による触媒性能の評価を行う。 (4)反応条件の最適化および反応機構の解明 当初計画では平成24年度から開始する予定であったが、十分な性能の触媒が得られていないので実施していない。今後検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
メタン部分酸化によるメタノール・ホルムアルデヒド合成用の高性能触媒の開発を目指して以下の研究を行う。 (1)微結晶超安定化Y型ゼオライト(USY)内包型ケイモリブデン酸(SMA)触媒 USY結晶を微細化できればMo導入量が増加し、反応に有効なSMA分子数も増加するので、触媒活性の著しい改善が期待される。これまでに微結晶USY触媒の調製に成功したので、今後はSMA分子の導入方法を検討し、触媒特性を評価する。 (2)中空シリカ内包型SMA触媒の合成 シリカの膜厚や細孔特性、SMA濃度、等の異なる中空シリカ内包型SMA触媒の合成に成功したので、今後は各試料の物性および触媒特性の評価を行い、改良を続ける。 (3)難揮発性Mo触媒によるメタン部分酸化反応 上記のUSYおよびシリカ内包型触媒はSMAの凝集を抑えることによってMoの昇華・損失を抑制し、高活性を維持することを期待している。これまでの研究からこのコンセプトがある程度正しいことは証明できたが、Moの昇華・損失を十分に抑制できたとは言えない。そこで、活性種をSMAよりも熱的に安定なMo化合物(例えばBiMo複合酸化物)に変更してその触媒特性を評価する。 (4) 反応条件の最適化および反応機構の解明 比較的活性が高い触媒が得られた場合、反応条件の最適化を行うとともに、赤外分光法等による反応機構の解明を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の直接経費900,000円のうち、触媒調製用の薬品類や反応試験用のガス類、等の消耗品の購入に750,000円、学会での研究成果発表に100,000円、報告書作成に50,000円を使用する予定である。
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