2011 Fiscal Year Research-status Report
バイオディーゼル燃料製造における副生グリセリンの革新的分離技術開発
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23651073
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
坂東 博 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80124353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳本 勇人 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70405348)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | バイオ燃料 / 製造プロセス / グリセリン分離 |
Research Abstract |
植物油とメタノールのエステル交換反応から製造される脂肪酸メチルエステル(以下FAME)はディーゼル燃料の代替品となることからバイオディーゼル燃料(BDF)と呼ばれる。その反応で副生するグリセリン(GL)はFAME中に残留してBDFの燃料としての品質を左右するため、GLの分離によるFAMEの精製は重要であるが、製造コストの観点からその分離は費用のかからない重力沈降により行われるのが一般的であり、BDF製造過程中で最も時間を要する。本研究課題では、GLとFAMEの化学的特性の違いを利用して、可能な限りエネルギーを使わず、短時間でFAMEからのGL分離を達成するための技術開発を目的としている。具体的には、GLとFAMEの化学的特性の違いである分子内-OH基数の相違に基づく親水性の差を利用して、親水性の表面をもつ物質をエステル反応混合物の分離容器に導入し、親水性表面上でGLの凝集を促すことにより、GLの相分離をより効率的に促進する物質の探索と分離条件の検討を行う。親水性の高い表面構造を持つ吸着剤(分離促進剤)を反応混合物に加えることによりこの分離の速度を向上させられると考え、化学的に安定でかつ親水性を示すガラスビーズを吸着剤のプロトタイプとする予備的な試験を行った。ガラスビーズの添加でGL分離の促進効果が見られたことから、更に半定量的な検討を行った。検討の結果、ビーズ添加量の増加に対して分離速度が向上することが確認され、この促進効果が吸着剤の存在であることが確認できた。また、ビーズ粒径が小さいほどグリセリンの分離が早くなることが明らかになった。ビーズ粒径が大きすぎる場合、何も加えない場合よりも分離速度が遅くなる傾向も得られたことから、ビーズの密度、比表面積の大きさ、粗BDF の粘度が関係すると考えられるので、今後これらの要素を詳細に検討する必要があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度当初の交付申請書に記載の予定である、1)親水性ポリマーや超親水性薄膜材料を塗布したビーズを充填剤とするカラム法試験(担当:坂東、徳本)、2)非希釈FAME・GL混合物を試料とする円筒試験管分離実験(担当:坂東、徳本)、3)相分離能に対する充填ビーズのサイズ効果の確認実験(担当:坂東、徳本)、4)パイロットプラントスケール対応の相分離促進システムの予備設計とそれを使ったハンドリング予備試験(担当:坂東)に照らして、実験室系で実施する基礎的な検討(項目1)~3))を定量的に評価するためのFAME(BDF主成分)、GL(副生成物)、MG・DG(エステル交換反応の中間生成物)の分離定量の為の装置再立ち上げと分析条件の確定までに予定より時間を要した。その結果この基礎検討部分については、最も基本と考えていたガラスビーズについてGLの分離促進効果を確認した(項目2))。またその効果の粒径依存性についても一定の評価を行うことができた(項目3))。項目4)については交付申請段階で予定していたGL分離試験槽(内容積50L)を製作した。
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Strategy for Future Research Activity |
エステル交換反応の反応混合物(粗BDF)を使って、一定量のガラスビーズを加えよく撹拌した混合物を静置した後、一定時間ごとに表層から少量の試料粗BDFを分注し、そこに含まれるグリセリン量の時間変化を見ることにより、分離効率の大きさを精度よく評価できる。平成23年度に使用した粗BDF試料は、製造の実証試験用パイロットプラント(学外に設置されているプラント)で反応を行った試料であったため、合成から時間が経過し一度グリセリンが分離したものを再度攪拌することで実験に供していた。この場合、合成直後に比べ分離速度として評価される値が速くなることが明らかになった。これでは実際のプラントにおける製造段階で実分離速度を正しく反映できていないという問題がある。これを解消するために、BDFの小規模合成から実験室で行い、分離までの時間をコントロールする必要がある。この点は既に予備試験を行なっており、ビーズによる分離速度の向上がより顕著に確認できるという結果を得ている。以上のべたように、ここまでの試験結果の検討は半定量的な手法に基づくものであったことから、9.の研究実績の概要の最後で述べた分離速度を支配する要素を詳細に検討するために、実験手法の高度化と一般化を検討する。また、植物油から生成する粗BDF中にはGLの他、類縁化合物としてGL中の-OH基のうち1個が脂肪酸とのエステル結合を残したままのモノグリセリド(MG)や2個がエステル結合のまま残ったジグリセリド(DG)が存在し、またそれぞれのエステル基が5~6種類の脂肪酸基とその組み合わせから出来上がっていることから、HPLCあるいはGPLCによる分離分析条件の確立が必要であり、早急にこの確立を図る。定量分析手法を確立した上で、当初計画に述べた各種の吸着剤を実験に供し、最適分離条件の確立を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主には、交付申請書段階で平成23年度から実施できる予定であった精度の良い定量分析手法を確立する目的で、植物油(トリグリセリド:平均分子量が一般的に900前後)から、DG(同ca.600)、MG・FAME(同ca.300)、GL(同92)を分離するためのHPLCカラム、GPLCカラム、それら用のガードカラムを中心に、分析の高度化のための物品購入に研究費を使用する予定である。また、当初の計画で平成24年度に予定していた項目5)パイロットプラントスケール対応の相分離促進システムの設計とそれを使った実証試験用に、実験室試験で好成績を収めた吸着剤(予想では、表面修飾ガラスビーズやポリビニルアルコールビーズ、表面修飾酸化チタンなど)を購入するために研究費を充てる。
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Research Products
(5 results)