2012 Fiscal Year Research-status Report
有機界面層を用いた環境調和型薄膜太陽電池の無毒化と高効率化
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23651080
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Research Institution | Kagawa National College of Technology |
Principal Investigator |
森宗 太一郎 香川高等専門学校, 電子システム工学科, 講師 (30455167)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 久仁彦 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (30334692)
辻 憲秀 香川高等専門学校, 電子システム工学科, 教授 (40099875)
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Keywords | 有機界面 / CZTS |
Research Abstract |
近年簡易な作製工程で高効率化が可能なCu(In, Ga)Se2 化合物 (CIGS)を用いた薄膜太陽電池が注目されている。しかし、CIGSは希少金属In、Gaと有害元素Seを含むことが問題であり、その代替材料としてCu2ZnSnS4化合物(CZTS)が注目され始めている。CZTSは構成する元素が豊富に存在すること、無害であること、太陽電池に適した光学特性を持つこと、簡単な作製工程であるという長所がある。しかしCZTS薄膜太陽電池の変換効率を向上させるために有害元素Cdを含むCdSを界面層として用いていることが問題となっている。 そこで本研究では、Cdを使用しない低環境負荷でレアアースを使用しないCZTS薄膜太陽電池を作製することを目的とし、CdS代替材料として有機材料を検討している。これまでの研究で界面層には高抵抗率と高透過率である材料が望ましいと考えられており、有機材料の多くはこれらの条件を満たしている。昨年度の研究において有機材料の中でも高い電子輸送性と耐熱性を持つフラーレン(C60)に注目した結果、界面層が無い場合と比較して変換効率が向上することが分かった。今年度は主にC60を界面層として使用した場合の発電特性とC60界面層の膜厚依存性について調べた。 素子作製方法は昨年度の報告と同様で、ソーダライムガラス上にMo/CZTS/C60/ZnO:Al/Alを堆積した構造である。光照射時におけるJ-V特性やIPCEのC60膜厚依存性を測定した結果、変換効率は界面層が無い場合において0.25%であり、C60の膜厚が約5nmのときに最大値をとり0.47%で、C60の膜厚を厚くするのに伴いは減少した。これらの要因として、C60を挿入することでヘテロ界面が形成されて光電流が増加したと考えられるが、その膜厚を厚くした場合、C60界面層の抵抗が取り出せる電荷量を制限していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は昨年度の結果を元に主にCZTS薄膜上へのC60薄膜成膜条件と膜厚依存性について検討した。特に真空蒸着法により成膜した後に大気中で熱処理した時の、表面状態の変化、光学特性の変化およびC60界面層の膜厚と素子特性の関係について調べた。 C60界面層の膜厚を0~200nmで変化させた結果、C60 膜厚が5nm付近で最も感度が高くなっており、開放電圧0.45mV、短絡電流密度3.61mA/cm2、曲線因子0.29、変換効率は0.47%であった。また光電流スペクトルを測定した結果、界面層の膜厚が薄くなるに伴い、ピーク波長が低波長側にシフトすることが分かった。この要因は照射光550nm以下におけるC60 の光吸収が減少したことによると考えられる。 また大気中でのC60 薄膜熱処理の結果300℃付近で結晶性がなくなっているため、今後はC60 の熱処理方法について検討していく必要があることが分かった。特にC60 界面層の上部に成膜されるZnO:Alは薄膜形成時において500℃付近で熱処理することで最も低抵抗率が得られることが分かっており、太陽電池の高感度化のためには必要不可欠である。 また可溶な有機材料として導電性高分子Pedot:PSS( Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)-poly(styrenesulfonate) )を界面層に用いた太陽電池についても検討した。その結果、整流特性が得られPedot :PSSの導電性が103 Ωcm程度で最大であったが、界面層が無い場合に比べて低い変換効率しか得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
まずC60界面層を用いた太陽電池について主に下記の内容について検討する。C60界面層を用いて更なる変換効率向上のための知見を得るために、まず真空蒸着法で成膜したC60薄膜を大気中と希ガス中で熱処理し、表面状態と結晶性、光学特性についてX線回折法、AFM観察、透過吸収スペクトルを用いて調べ、素子特性と比較しながら検討する。C60結晶はそれぞれの分子が面心立方格子の各配位に位置することで結晶を構成することが知られており、その結晶性と膜厚、素子特性について評価する。次に、現有の基板加熱型真空蒸着装置を使用してC60薄膜成膜時の基板温度を変化させることで、C60薄膜の結晶性が素子特性に与える影響を調べる。またC60を用いた場合の問題点は、C60薄膜成膜後に必要なZnO:Al(AZO)透明電極形成時の熱処理温度である。温度が500℃程度において透明電極の抵抗率が最も低く、高感度な特性が得られるが、500℃で加熱した場合、C60分子の結合が切れ結晶を形成しないと考えられる。現状では300℃で加熱しているが、AZOを使用せず、AuやAgを使用して半透明な電極を形成した場合の素子特性について調べる。これによりC60の結晶性を制御しながら良好な素子特性が得られる可能性がある。 次に可溶性有機材料を用いたCZTS薄膜太陽電池特性について調べる。最終的に簡易な作製工程を提案するために、全て溶液法で成膜するための手法を探る。特に熱処理温度が素子特性に及ぼす影響について調べる。 また更に高感度な素子を作製するためには、半導体の物性を求めることが重要であり、仕事関数もその一つであると考えられる。仕事関数の大きさは電子の受け渡しの指標となるため、電極へのキャリア取り出しを大きく左右する。本研究は各材料の仕事関数やバンドギャップを求めることでCZTS太陽電池のポテンシャル図について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高真空の金属蒸着装置で半透明電極材料や陰極材料を制御ため、金属材料や電極ボートを購入する。また有機界面層を作製するための有機材料や有機蒸着ボートを購入する。また装置の維持や消耗部品などの購入のために必要となる。旅費類は、研究成果の発表や研究討論のための会議等に出席するため必要不可欠である。
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[Presentation] Environment friendly Solar Cells based on Cu2ZnSnS4/C602013
Author(s)
Taichiro Morimune, Haruka Takimoto, Tanaka Kunihiko, Hisao Uchiki, Hirotake Kajii, Yutaka Ohmori
Organizer
Seventh International Conference Molecular Electronics and Bioelectronics M&BE7
Place of Presentation
Fukuoka International Congress Center Fukuoka, Japan
Year and Date
20130317-20130319
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