2011 Fiscal Year Research-status Report
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23651089
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
矢貝 史樹 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80344969)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ナノテクノロジー / 会合体 / 分子集合体 / 超分子 / 有機エレクトロニクス |
Research Abstract |
当該年度は、バルビツール酸置換π共役分子が低濃度溶液中(20μM)で形成するナノリングの安定化を試みた。これまではπ共役部位としてオリゴフェニレンビニレンを導入していたが、スチルベン、ベンゼンと共役長を短くすることで、1mMまで安定なナノリングの形成に成功した。さらに、スチルベンを用いた分子に関しては、2つのナノリングが連結してできたカテナンの形成が原子間力顕微鏡(AFM)により確認された。数千分子の自己集合からなるナノリングがカテナンを形成した例はこれまでに報告がない。さらに、機能性ナノリングを構築するために分子の分光特性を上げることを目的とし、コア部をナフタレンに変換した分子を2種合成した(位置異性体)。興味深いことに、これらの分子はJ会合体とH会合体を形成することが吸収および蛍光スペクトルから明らかになった。さらに、AFMと透過型電子顕微鏡観察(TEM)により、J会合体は5mMまで安定かつ、これまでで最も構造均一性の高いナノリングを形成することが明らかになった。一方、H会合体は、剛直なナノロッドを形成することが明らかになった。これらのナノ構造は溶液中でも形成されていることが動的光散乱の濃度依存性からも確認された。バルク状態での粉末X線回折測定により、ナフタレン分子がバルビツール酸の水素結合によりディスク状の6量体を形成し、このディスクが積層することでカラム構造を構築することが明らかになった。分光スペクトルの結果と合わせると、このディスクの積層の際の"ずれ"がナノリングとナノロッドの作り分けに必須であることが明らかになった。以上のように、当該年度はナノリングを効率的に形成させるための具体的な分子設計指針に関する重要な知見を得ること成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、I) ナノリングを安定化させることと、II) コアπ共役部位の機能特性を上げること、の二つを目的として研究を推進した。現時点で研究は当初の予測を上回る成果を得ている。I)においては、ナノリングを安定化(高濃度でも開環しない)する分子デザインによって、2つのリングが連結した自己集合性カテナンを世界に先駆けて発見することができた。II)においては、ナフタレンによって構成分子の機能特性が上昇したばかりでなく、分子構造の位置異性によって、色素の会合体としては典型的なJ会合体とH会合体を作り分けることに成功し、それらの特徴的な会合様式に由来する魅力的な光学・電子特性を導きだすことに成功した。さらに、これらの会合体は、ほぼ完璧なナノリングとナノロッドを形成することも明らかなった。この分子構造・会合様式・ナノ構造の明確な相関関係は、今後の分子設計においてナノリング構造を選択的に形成するための重要な指針となる。以上の成果より、本研究は当初の計画以上の進展を見せていると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ナフタレンをコア部に用いた2種の位置異性体が、J会合体からなるナノリングとH会合体からなるナノロッドを形成することを見いだしたので、今後はこれらのナノ構造の電荷輸送特性を時間分解マイクロ波伝導度測定により評価する。さらに、これらの位置異性体を同一系内で会合させたときに、混ざり合ってナノ構造を形成するか(共会合)、それとも自己を認識して集合(セルフソーティング)するか調査する。さらに、当初の予定通り、クロロフィル分子にバルビツール酸を導入した新規分子の合成も行い、クロロフィルからなるナノリングの構築を試みる。また、光応答性ナノリングの構築を目指し、ジアリールエテンおよびアゾベンゼンをコア部に有する分子の合成にも着手する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、主に測定にかかる溶媒類とAFM用のカンチレバー、さらに新規分子の合成にかかる試薬溶媒類の購入に充てる。
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