2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23651089
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
矢貝 史樹 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80344969)
|
Keywords | ナノテクノロジー / 会合体 / 分子集合体 / 超分子 / 有機エレクトロニクス |
Research Abstract |
前年度開発に成功したバルビツール酸置換π共役分子からなるナノリングは離散型のナノ構造であり、様々な手法を試したがそれ以上積層することはなかった。すなわち、リングがさらに積み上がり、何かより大きな構造体を自発的に形成する、といったことは通常の条件下では起こらなかった。リングが動的にナノチューブへと組織化する「積層型ナノリング」の構築を目指し、新規にアゾベンゼン二量体分子をデザインした。この二量体は、アゾベンゼンが分子内πスタックすることにより折り畳まれ、分子形状がくさび形になり、アミド基間の水素結合により同じ方向を向いて湾曲して会合し、ナノリングを形成することをねらった。形成されたリングの上下面はアゾベンゼン部位がむき出しになっているため、チューブを形成すると予想した。これらのナノ構造はAFMにより直接可視化が可能であるが、分光法による裏付けをとるために、キラル側鎖を導入し、アゾベンゼン間の励起子相互作用に円二色性(CD)活性となるようにした。AFMで観察の結果、20 ℃では直径12 nmのナノリングを形成することが明らかになった。さらに、0 ℃ではリングの数が大幅に減少し、幅12 nmほどのロッド状のナノ構造が観察された。ロッドをTEMで観察すると、中空であることが明らかになり、低温でさらに組織化が進み、リングが重なってチューブになることが明らかになった。リングが積層してチューブを形成する両親媒性合成分子はほぼ同時期にLeeらによって報告されたが、非水系でこのような複雑などナノ構造の動的制御を再現できた系はない。また、アゾベンゼンの光異性化によるナノ構造の変化も確認されている。現在、さらなる機能性部の導入によって、特異な機能を発現する動的ナノ構造システムの構築に挑戦している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は既に分子デザインが確立しているナノリングを基盤として動的ナノ構造の制御を目指す予定であったが、実際は困難を極めた。しかしながら、得られた知見を分子設計にフィードバックすることで新規な分子デザインの確立に成功した。この展開は全く予想できなかったが、申請当初の計画よりも遥かに目標の実現可能性が高い系を見つけることが出来たことは大きな進展と考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
積層型ナノリングを与えた分子デザインを基盤として、更なる機能化を図る。リング内部に位置する置換基として、パーフルオロアルキル鎖を導入し、リングおよびチューブ内部に特異的空間を作り、物質の内包をねらう。さらに、ピリジン等の配位子を末端に有する置換基を導入し、ポルフィリンや金属錯体等の内包をねらう。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、主に測定にかかる溶媒類とAFM用のカンチレバー、さらに新規分子の合成に必要な試薬溶媒類の購入に充てる。
|
Research Products
(7 results)