2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23651091
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今野 巧 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50201497)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | イオン結晶 / 自己組織化 |
Research Abstract |
カチオンとアニオンから構成されるイオン結晶中では、カチオンとアニオンが交互に配列するのが常識である。本研究では、金属錯体カチオンが多重の超分子相互作用に基づいて自己集積化し、それに伴い無機アニオンが超分子集積体の空孔に異常集積化するようなイオン性ナノ構造体の創製について検討した。 まず、多座の有機配位子としてチオール基をもつアミノカルボン酸とビス(ジフェニルフォスフィノ)エタンを用いて、チオール基とフォスフィン基が金(I)イオンに結合したキラルな直鎖状の二核錯体を合成した。得られた二核錯体については、各種分析手段により同定するとともに、単結晶X線構造解析によりその構造を決定した。これにより、この錯体の錯体配位子としての機能性に関する構造的知見を得た。次に、アミノ酸部位とのキレート配位に有利な様々な八面性金属イオンを上記で得た二核錯体と反応させたところ、特にコバルト(III)イオンと結合させた場合には、安定なカチオン性多核錯体が得られた。この多核錯体の溶液に、サイズ、価数、幾何構造の異なる無機アニオンを添加したところ、特に過塩素酸イオンを添加した場合に、良好な単結晶が収率よく得られた。固体状態での吸収スペクトル、円二色性スペクトル、赤外吸収スペクトルなどによりこの化合物の同定を行うとともに、単結晶X線構造解析を行った。その結果、この結晶中では、カチオン性多核錯体が自己集合化した隙間に過塩素酸イオンの集積体が存在することが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施の概要に記したように、イオン性ナノ構造体のビルディングブロックとなり得る硫黄架橋多核錯体の合成に成功している。また、その構造を単結晶X線解析から明らかにしており、期待した通り、無機イオンを対アニオンとするカチオン性多核錯体であることが示された。さらに、このカチオン性錯体の集積化に伴う無機アニオンの集積化に関する知見も得ており、研究は順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成23年度とは別の含硫アミノ酸類、ジフェニルビスフォスフィン類、金属イオンを用いた反応について検討する。これにより、無機アニオンの異常集積化を誘発するイオン性ナノ構造体を開発するとともに、無機アニオンの異常集積化に関する指導原理を追求して行く。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、比較的安価な有機配位子および金属塩を用い、目的の化合物の合成条件の探索に研究の重点をおいた。今年度は、23年度の残金も活用し、比較的高価な試薬も使用して本研究を遂行して行く予定である。
|
Research Products
(2 results)