2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23651091
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今野 巧 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50201497)
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Keywords | イオン結晶 / 自己組織化 |
Research Abstract |
カチオンとアニオンから構成されるイオン結晶中では、カチオンとアニオンが交互に配列するのが常識である。本研究では、金属錯体カチオンが多重の超分子相互作用に基づいて自己集積化し、それに伴い無機アニオンが超分子集積体の空孔に異常集積化するようなイオン性ナノ構造体の創製について検討した。 まず、平成24年度に引き続き、多座の有機配位子としてチオール基をもつアミノカルボン酸とビス(ジフェニルフォスフィン)類を用いて、チオール基とフォスフィン基が金(I)イオンに結合したキラルな直鎖状の硫黄架橋二核錯体を各種合成した。得られた二核錯体については、各種分析手段により同定するとともに、いくつかについては、単結晶X線構造解析によりそれらの構造を決定した。これにより、これら錯体の錯体配位子としての機能性に関する構造的知見を得た。次に、アミノ酸部位とのキレート配位に有利な三価の八面性金属イオン(コバルトおよびクロム)を上記で得た二核錯体と反応させることにより、安定なカチオン性多核錯体を得た。これら多核錯体の溶液に、サイズ、価数、幾何構造の異なる無機アニオンを添加したところ、ハロゲン化物イオンやオキソ酸イオンを添加した場合に、結晶が収率よく得られた。固体状態での吸収スペクトル、円二色性スペクトル、赤外吸収スペクトルなどにより得られた化合物の同定を行うとともに、塩化物塩や硝酸塩については単結晶X線構造解析を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施の概要に記したように、イオン性ナノ構造体のビルディングブロックとなり得る硫黄架橋二核錯体の合成に成功している。また、その構造を単結晶X線解析から明らかにしており、期待した通り、無機イオンを対アニオンとするカチオン性多核錯体であることが示された。さらに、このカチオン性錯体の集積化に伴う無機アニオンの集積化に関する知見も得ており、研究は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
単結晶X線解析により全体の構造については明らかとなっているが、構造解析の精度が良くないために、細部についての詳細な構造についてはいまだ不明である。そこで、25年度は極めて良好な単結晶を合成し、より精度の高い単結晶X線解析を行う。これにより、無機アニオンの異常集積化を誘発するイオン性ナノ構造体の構築、ならびに、無機アニオンの異常集積化に関する指導原理を追求して行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、合成に必要な有機配位子および金属塩を購入して研究を進めた。今年度は、これまでの残金を活用し、化合物の合成に必要な試薬の購入とともに、単結晶X線解析をはじめとする各種分析機器使用料に研究費を使用する。また、得られ成果の発表のための出張旅費としても使用する。
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Research Products
(2 results)