2011 Fiscal Year Research-status Report
フォトクロミック分子系を用いた不斉の発生と増幅システムの構築
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23651092
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
藤木 道也 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (00346313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 剛美 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (60334504)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 円偏光 / 高分子 / 鏡像対称性 |
Research Abstract |
1920年代にW.Kuhnが円偏光(CPL)を用いた絶対不斉合成の可能性を言及し、1970年代になってKagan, Calvinがヘキサヘリセンの円偏光合成(2%ee)により実証した。近年, CPL励起による光学活性分子、金属錯体、超分子、液晶、高分子の生成が報告されているが光学活性収率は低く、RikkenとRaupachが報告した金属錯体(ラセミ体)の不斉光分解では、静磁場印加、自然光照射で0.01%eeであった。本年度は(1)光学不活性アゾベンゼンーフルオレン交互コポリマー(F8AZO, Macromolecules, 44, 5105-5111 (2010))の希薄溶液分散体ならびに良溶媒-貧溶媒に分散させた凝集体(初期はラセミ体)に対する円偏光照射効果を詳細に検討した。その結果、希薄溶液中では光学活性の発現は認められなかったもののシス体からトランス体への熱異性化反応が(反転機構ではなく)回転機構で進行しているとの知見を得た。そこでさらに凝集体に対する円偏光効果(波長、円偏光度、照射時間)、溶媒効果などを詳細に検討した。その結果、F8AZO凝集体から非常に強い光学活性の発生、光学活性のラセミ化、光学活性の反転、光学活性の長期保持(少なくとも2週間以上)特性が円偏光のみで完全制御できた。溶媒分子の直鎖・分岐鎖構造および屈折率制御が重要との知見を得た。円偏光は±h/2piのスピン成分を有しており、フォトニックスピンの光閉込効果により鏡像対称性の破れと保持が完全制御できた。1920年代にオパーリンはコアセルベート仮説を提唱していたが現在では殆ど忘れ去られている。本実験からは1μmサイズの粒子に対してフォトニックスピンの注入と閉込め効果が有効に作用することによる非平衡熱力学効果により鏡像対称性の破れが効果的に起こったものと考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1μmサイズのアキラル高分子粒子に対してフォトニックスピンの注入と閉込め効果により鏡像対称性の破れが効果的に起こることを実験的に示した。円偏光のみでアキラル高分子凝集体から非常に強い光学活性の発生、光学活性のラセミ化、光学活性の反転、光学活性の長期保持特性が完全制御できた。溶媒分子の直鎖・分岐鎖構造および屈折率制御が重要との知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後この知見をもとに、アキラル低分子系(アゾベンゼン、スピロピラン、ジアリルエテン)、他のアキラル高分子系に展開していきたい。F8AZOはStereogenic Bondのみからできた高分子だが、Stereogenic centerからできた高分子/分子にも展開していきたい。ベンゾインなど光重合触媒を用いて絶対不斉光重合にも展開していきたい。光エネルギーを化学エネルギーとして蓄積する手法にも展開していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額が生じた要因は、研究の進捗状況に合わせ、予算執行計画を変更したことに伴うものである。未使用額を含めた研究費の使用計画は次のとおりである。アキラル低分子をドープしたスピノーダル分解した相分離した高分子や高分子薄膜ならびに円偏光分光器で状態変化をリアルタイプで検討するため、ポンプ光導入用のファイバー導入系や近赤外(波長700-1100nm)ポンプのための光学フィルターなどを購入する。
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Research Products
(6 results)