2011 Fiscal Year Research-status Report
多粒子系メゾスコピック現象の解明 -三次元電子顕微鏡法による挑戦-
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23651094
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
今野 豊彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (90260447)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 和久 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (70314424)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 多粒子系 / メゾスコピック / 協力現象 / 超常磁性 / 三次元電子顕微鏡 |
Research Abstract |
本年度はまず、超高真空電子ビーム蒸着法を用いて5-10nmサイズのCo-12~30at%Pt合金クラスターを作製し、そのマクロな磁気的性質をSQUIDにより測定した。磁化測定に際し、零磁場付近での残留磁化を除去し微細なナノクラスターにおける測定精度を高めるべく、本助成金にてマグネットリセットを導入した。その結果、磁化の温度依存性(ZFCFC曲線)や減磁曲線(IRM/DCD)を、従来よりも低ノイズで測定することができた。続いて、さらに微細な4nmサイズのL1o型CoPt合金クラスターを作製し磁化測定を行ったところ、従来よりも圧倒的にノイズの少ない磁化曲線が得られ、微細なクラスターの磁化測定におけるマグネットリセットの有用性が確認された。 一方、マクロな磁化測定と平行して、300kV-TEM(FEI TITAN80-300)のローレンツ顕微鏡モードの動作確認を行い、対物レンズならびにミニレンズ励磁による試料薄膜への縦磁場印加実験を行った。このとき、トモグラフィ観察用の高傾斜ホルダー(80°傾斜対応)を用い、試料面内へ磁場を印加した(最大22kOe)。その後、ローレンツ像観察を行ったところ、Co-17at%Hoスパッタ薄膜において、磁壁による明瞭なコントラストが観察された。また、Co-27at%Ptスパッタ粒子(粒径~100nm)において、残留磁化状態におけるナノ粒子内部の磁気コントラストが磁場印加方向(面内・面直)により変化する様子が観察された。これら観察において、ローレンツモード(対物レンズOFF)における非点補正に細心の注意を払った。 上記研究のほか、アモルファスカーボン支持膜上に形成した3nmサイズのCoPtナノ粒子の収差補正高分解能観察を行い、多重双晶粒子(MTP)の形成と微細なMTPにおける規則格子形成を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、(1)種々のサイズを有するCo合金クラスターの作製、(2)SQUIDによるマクロな磁化測定とマグネットリセット導入による測定精度向上の確認、(3)ローレンツ観察モードにおける基本動作の確認、の3点について研究を実施することができた。よって、当初の計画に基づいておおむね順調に進展していると判断した。また本研究に関わる成果をこれまでに3回学会発表し、萌芽的研究としての本テーマは学会においても着実に認知されている。さらに当該年度に投稿した論文が2報掲載決定し、本基金による成果の公表も迅速に行っていると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)数層にわたって積層したCoPtクラスターの作製と磁化測定、ならびに3次元構造観察:磁性ナノ粒子層を積層した試料を作製し、積層間隔を変化させることにより粒子間相互作用を制御する。電子線トモグラフィにより3次元観察を行い、クラスターの分散形態とブロック温度との対応を調べる。またクラスターの原子的構造、とくに原子レベルでの構造欠陥をHRTEM及びSTEMにより明らかにする。(2)ローレンツ顕微鏡法による磁気コントラスト観察:平成23年度に引き続き、ローレンツ顕微鏡法を用いてCo合金クラスターの磁気コントラスト観察と、外部磁場印加によるコントラストの変化について調べる。後者の研究には、Pt濃度が低く磁気異方性がやや弱いCo合金クラスターを用いる。(3)CoPt合金クラスター集合体の磁気イメージング:クラスター集合体を一つのメゾスコピック系としてとらえた上で、ローレンツ顕微鏡法および電子線ホログラフィーを用い、個々のクラスター間の磁力線観察を試みる。この観察により、温度の低下に伴って生じるマグネティッククラスターの形成及び成長過程を検討する。(4)局所的磁気構造と集合体としての磁気応答性との関連:以上の (1) クラスター構造、(2) 個々のクラスター磁気構造、(3) クラスター集合体としての磁気相関は、系全体のマクロ的磁気特性に結びついており、SQUID による種々の磁気測定(FC および ZFCによるブロッキング現象の定量化)と比較することにより、クラスター集合体の磁気応答をメゾスコピック系特有の相関、ゆらぎ、そして相関の崩壊という観点からの定式化を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度は本研究テーマの最終年度であることから、前項で述べた本研究を構成するマルチスケールにおよぶ個々の課題が収束する方向で研究費を使用する。装置そのものは完備しており、収差補正電顕による高分解能像のデータ処理、ホログラフィーのデータ処理、そして磁気測定に必要な液体ヘリウム等の消耗品に用いる。なお、平成23年度未使用額は、研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Book] Academic Press2012
Author(s)
K. Sato, T. J. Konno, Y. Hirotsu
Total Pages
165-225
Publisher
Advances in Imaging and Electron Physics Vol.170