2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23651097
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊田 進太郎 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70404324)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | ナノシート / 誘電率 / 超薄膜 / サイズ効果 |
Research Abstract |
厚さ1nm以下の酸化チタンナノシートを二枚の電極で挟んでキャパシタを作製し、その容量測定の結果から酸化チタンナノシート1枚の比誘電率を求めると、出発の層状物質の比誘電率よりも数倍大きくなる結果が事前実験で得られた。通常、誘電体の誘電率は、膜厚が10ナノメートル以下になると減少するという報告あるため、これらの結果が正しいならば、この現象は誘電体に関する新しい正のナノサイズ効果となる。本研究ではこれらの現象が真実であるかの確認と発現メカニズムについて調査することを目的としている。今年度は酸化チタンナノシート1層を誘電体層とするナノシートキャパシタの作成と、そのキャパシタの評価システムの構築を目的として研究を実施した。酸化チタンナノシートは、フラックス法によって作製した単結晶層状酸化チタンを剥離することによって作製した。このナノシートを平滑な単結晶グラファイト電極上に単層で堆積させた後、直径が数ミクロン程度の上部電極を堆積させることによって、目的のナノシートキャパシタ構造を作製した。キャパシタ評価システムとしては、原子間力顕微鏡で上部電極を探して、導電性のカンチレバーをプローブとして、誘電特性を評価するシステムの構築を目指した。このようにして作製したナノシートキャパシタと評価システムを用いて、誘電特性を評価したところ、事前実験で得られたような誘電特性が得られ、上記のような正のサイズ効果が存在する可能性が示された。また、この研究を通して、明らかになった課題としては、再現性・信頼性のある誘電特性を得るためには、プローブ針と上部電極との高い接触抵抗を低減させる必要があることが示された。今後は、さらに測定システムを改良し、測定の信頼性及び、再現性を向上させ、この異常な誘電特性の発現メカニズムについて明らかにしていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現状では測定の再現性に少し課題があるが、今年度の目標であった酸化チタンナノシートキャパシタの作製とナノ薄膜誘電率測定システムの構築は達成できたため、研究としての達成度はおおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
24年度はペロブスカイト構造をもつナノシート1枚(厚み約1.5nm)の誘電率測定を実施し、ナノシート構造と誘電率の関係を明らかにする予定である。測定の再現性については、素子作製プロセスと測定システムの両方から向上を試みる予定である。また、誘電率の増大が起こる機構に関して、誘電体膜厚を1nm以下していくと、誘電体内の金属イオンと酸素イオンがバルク空間にくらべて変位しやくするためと考えている。そのため、ラマンなどの分光法による界面の結合状態の解析と表面原子の変位モデルを第一原理計算により検証し妥当なメカニズムを提案する。また、これらのメカニズムから新しい蓄電デバイスの素子構造の提案を目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
赤外分光光度計の高感度反射測定ユニット及び、実験消耗品購入のために物品費として2000千円、旅費として300千円、その他経費として100千円(直接費合計:2400千円)の使用を予定している。
|