2011 Fiscal Year Research-status Report
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23651101
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福原 幹夫 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (30400401)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アモルファス合金、スペイン / 弾道伝道 / 金属クラスタ、アメリカ / トンネリング / センチメートル |
Research Abstract |
【研究目的】の「応募者が最近世界で初めて発見した常温で銀より20倍良好な伝導性を持つ『センチメートルサイズ常温バリスティック(弾道)伝導現象(Fukuhara et al,J. Appl.Phys.107,033703(2010))』を体系化することで、銀・銅代替の常温良導電性材料を開拓するものである」に対し、H23年度の研究実施目標は【アモルファス度と諸特性】、【磁気誘起弾道伝導効果検証】と【金属クラスター構造解析と水素位置の確定研究】の実現であった。本年度はこのうち、【アモルファス度と諸特性】と【金属クラスター構造解析と水素位置の確定研究】が実現できた。【磁気誘起弾道伝導効果検証】は東日本大震災で強磁場センターの低温磁場発生装置が壊れ、低温から常温までの実験ができなかった。【アモルファス度と諸特性】ではアモルファス度の測定がX線解析法では不可能なので、横波超音波法によるアモルファス相コロニー解析によりアモルファス度の定義がなされ、合金リボン作成時の周速度が10,000 rpm(104 m/s)の時、電気伝導性は銀より4桁向上したが、液体ヘリウム温度から約-50℃までの低温領域でしか出現しなかった。常温バリスティック(弾道)伝導現象の出現にはリボン作成時の周速度を更に高速にする必要がある。【金属クラスター構造解析と水素位置の確定研究】では、SPring 8でのXAFS解析とクラスターの解析シミュレーションにより、Ni中心の崩れた20面体Ni5Zr5Nb3の存在が明らかとなった。水素はクラスター中Ni元素を避ける為Zr原子とNb原子の4面体内に最大14個浸入できる事も判明した。バリステック伝導の機構はサブナノメートル寸法である約0.23 nm間のクラスター島間を電子が無抵抗でトンネリングすることから説明できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アモルファス合金リボン作成用の超急冷リボン作成装置の周速度をAr雰囲気下、10,000 rpmまで増加させ、すなわちアモルファス度を90%近くまで向上させ、合金組成や水素固溶条件(量、pH値、温度等)を変え、繰り返しの実験をしたから。最適合金組成は水素に対する親和性の高いZrの量が律速段階であることをつきとめ、更にアモルファス合金のクラスター構造をSPring 8のXAFS解析とクラスターシミュレーションとの連動により主クラスター構造の確定ができたから。すなわち最適Zr量は20面体クラスター構造に密接に関係しており、また固溶水素量はこのクラスター中、Ni原子を避けZr原子の近傍の4面体中に偏在することが、この良伝導性に寄与していることを知ったから。研究水準の背景として東北大学金属材料研究所がアモルファス合金研究の世界のメッカとなっていることも無関係ではないであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
周速10,000 rpmのリボン作成装置を購入しHe雰囲気下のリボン作成を試み、アモルファス度100%のアモルファス相を作成し、適度の水素を固溶させ、常温弾道伝導体の開発を目指す。原料純度、高融点Nbの固溶体作成方法、リボン材の表面粗度等々の試験片状態の解析は再現性ある常温弾道伝導体の開発にとって不可欠の要素である。更に液体He温度から常温までの温度領域における強磁場中の電気抵抗率を測定する。これは対電子の超伝導がマイスナー効果により強磁場中破壊することに対して、ー電子の弾道伝導は同様な磁気誘起良伝導破壊効果が起こるかどうか確証のための重要な実験となるであろう。もしこの弾道伝導体が常温で実現するならば、超電導代替の夢の材料になり強電・弱電に無関係に産業革命をもたらすであろう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.常温弾道伝導体の実現を目指して:リボン作成周速度を最大10,000 rpmにし、Arより10倍以上熱伝導性の良いHe雰囲気中で作成する。得られたリボンの性状をX線解析、横波超音波解析法、密度測定、SEM観察等で把握する。次に電気伝導性に及ぼす最適水素量を探査する。水素量の定量には不活性ガス熱伝導度測定法と密度測定法を併用する。アモルファス度100%のリボンを用い常温弾道伝導体の実現を目指す。2.弾道伝導再現性の検討:弾道伝導は液体He温度まで冷却した後に出現したり、昇温中の出現温度領域が一定にならなかったり、経時変化が起きる。この不安定性を出発原料純度、高融点Nbの合金均一化操作、水素固溶条件等の諸条件を洗い出し、最適条件を検討する。3.低温磁場中の電気伝導特性:~3Tの磁場印加中の伝導特性を4-300 Kの温度範囲で検討する。焦点は超電導と同じマイスナー効果があるかどうかである。無いとしても実際電流密度はどのくらいまで上げられるのかが問題である。
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Research Products
(3 results)