2012 Fiscal Year Annual Research Report
一次元ナノ構造有機半導体による量子相関光子対生成への新展開
Project/Area Number |
23651105
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
谷 俊朗 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60302923)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 勝 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30345334)
|
Keywords | ナノ材料 / 有機半導体 / J会合体 / 光子対 / 量子相関 / フレンケル励起子 |
Research Abstract |
本研究では,室温で量子もつれ光子対の生成を可能とする材料構造の特定を目標に,1次元ナノ構造有機半導体であるJ会合体に特有な,室温でも安定に生成するフレンケル励起子の可能性を世界に先駆けて追求することを目的として,その評価装置の構築と試料形態の検討を進め,検出技術基盤の確立に着実な見通しを得た。J会合体で量子もつれ状態が実証できれば,ナノ構造光源材料に関する新規な選択肢を提供できると共に,励起子光物性・有機半導体に係わる基礎科学分野にも多大の貢献が期待できる。 擬イソシアニン色素分子PICを特定の条件下で凝集させるJ会合体と呼ばれる1次元ナノ構造をモデル物質として,このJ会合体を活性媒質として高分子PVS薄膜中に分散し,平行平面鏡で挟んで微小共振器構造にしたものを最終的な試料構成として,段階を追って特性を抽出しつつ完成させることとした。Jの室温における共振器ポラリトン生成の可否は既に確認済みなので,そのもととなる室温における1次元フレンケル励起子のコヒーレンス長とJのモルフォロジーとの相関に関する詳細な検討に引き続き,今年度は,量子もつれ光子対生成の検出装置の基盤確立を目標とした。光子対発生・検出装置は,試料光励起の光源部と,発生した光子対を単一光子計数レベルで時間相関識別する計測系からなるが,J会合体励起子構造の特徴を顧慮した後者の開発基盤の確立に今年度は特に注力し,一定の成果を得て研究を総括した。光子対量子相関計測装置の多くは,対をなす物性量として偏光特性を用いることが多い。Jの励起子系では,1次元性の表れとして2励起子帯の形成に特徴があり,生成する光子対の各エネルギーと方向にも特有の相関を生じる可能性がある。これに対応して,発生する光子対の角度とエネルギーの弁別機能を備えた装置設計とした。2種類の模擬的光源を性能評価に用い,単一光子レベルの時間相関計測性能を確認した。
|