2011 Fiscal Year Research-status Report
Eu添加アパタイト・ナノ結晶に対する抗体固定法探索とがん超早期段階の診断
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23651108
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 順三 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (10343831)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 診断 / バイオイメージング / 水酸アパタイト / 発光 / ナノ結晶 |
Research Abstract |
本研究は、生体内・外でがん細胞を効率よく検出するため、生体・細胞親和性および発光効率の高いナノ結晶を創製して、細胞レベルで腫瘍部位を特定するイメージング技術を開発する。具体的には(1)ユーロピウムイオン(Eu)を添加した水酸アパタイトナノ結晶の合成と欠陥・形態の制御、および (2)がん細胞と特異的に結合・取込まれる分子をナノ結晶表面に化学修飾する技術開発に取り組み、超早期予防・診断医療の基本技術の確立を目指す。平成23年度は、Euイオンドープアパタイトナノ結晶の創出に取り組んだ。水酸化カルシウム懸濁液に、Eu/Caのモル濃度が2.5 mol%になるように塩化ユウロピウムを添加し、0.15 Mのリン酸水溶液を滴下することでEu:HApの懸濁液を調製した。懸濁液は吸引濾過によりEu:HApを分離し150℃で乾燥した。空気中で300、600、900、1200℃で焼成し、Eu:HApの粉末を得た。作製したEu:HApはいずれもXRD測定の結果からHAp単相であることが確認できた。蛍光顕微鏡観察(励起波長300-400 nm)から、赤色の発光が観測された。また、焼成温度を高くすることによって、発光スペクトル(励起波長464 nm)の形状が変化することが分かった。焼成温度が900℃以上で焼成した試料の発光スペクトルから、可視光領域の波長464 nmの励起により、4f-4f遷移による発光極大波長(5D0→7F0: 572 nm・577 nm、5D0→7F1: 610 nm、5D0→7F2: 621 nm・627 nm)がそれぞれ観測された。5D0→7F0における572 nmの発光が577 nmに対して特異的に強いことが分かった。これは、Ca(II)サイトにEu3+が多く置換されたためと考えられる。以上より、可視光励起による強い発光を示すEuイオンドープアパタイトナノ結晶が合成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、Euイオンドープアパタイトナノ結晶(Eu:HAp)の創出に取り組み、水酸化カルシウム懸濁液にEu/Caのモル濃度が2.5 mol%になるように塩化ユウロピウムを添加し、0.15 Mのリン酸水溶液を滴下することでEu:HApを合成した。900℃以上で焼成した試料についてEu3+が水酸アパタイト構造中のCa(II)サイトへ置換され、可視光励起による強い発光を示すことを明らかにした。さらに、次年度に予定していたEu:HApへの細胞結合性分子の表面修飾にも着手しており、当初計画以上のスピードで研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、細胞結合性分子修飾ナノ結晶の細胞への結合・取込の評価を目的とする。細胞結合性分子の表面修飾技術の確立については、2段階の反応により実施する。細胞結合性分子として、葉酸受容体を標的とした葉酸分子や、HER2を標的としたHER2抗体を用いる。液相反応により3-アミノプロピルトリエトキシシランをEuドープ水酸アパタイトナノ結晶表面へ化学吸着させて最表面にアミノ基を形成させる。次いで、アミノ基と細胞結合性分子内のカルボン酸の脱水縮合反応により、細胞結合性分子をナノ結晶表面に共有結合を介して形成させる。試料の評価・解析は、赤外・ラマンスペクトル分析(修飾に伴う結合状態の考察)と熱重量分析(修飾量・被覆率の算出)、動的光散乱(水系分散性の評価)により実施する。がん細胞への結合・取込特性の評価については、結合・取込後の細胞標識挙動を評価する。癌細胞としてHELA細胞を用いた培養法を確立する。濃度の異なるナノ結晶の培地分散液を細胞に対して添加し、分裂・増殖挙動を観察し、生体毒性を評価する。細胞周期の異なる細胞(細胞を播種して直後~7日間の細胞)に対してナノ結晶の培地分散液を添加し、細胞周期・密度に依存した結合・取込挙動を見出す。特に、初期の細胞膜表面への結合反応およびレセプター介在性エンドサイトーシス経路による取込反応を詳細に評価する。さらに、線維芽細胞とHELA細胞を共培養して、HELA細胞への特異的反応を見出す。試料の評価・解析は、蛍光顕微鏡、蛍光強度測定装置により実施する。さらに、微小癌を持つモデルマウスに対して、消化管や腹腔から小型分光内視鏡でアクセスできる臓器へ静脈内注射または噴射によりナノ結晶を投与し、小型分光内視鏡を用いて生きている状態でのリアルタイムな微小がん検出における原理・機能確認を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は効率的に研究費の使用ができたため残額が生じた。また残額のうち、会計処理の都合上支出が遅れたが、すでに平成23年度の人件費として支出済みである。平成24年度は、前年度の繰り越し金を含め、主に表面修飾用試薬や細胞培養用消耗品に研究費を使用する。さらに国内外の学会へ参加し成果を広く発表していくため、旅費を使用する。また国際論文誌への論文投稿のための諸経費(英文校閲費、投稿料等)に使用する計画である。
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