2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23651110
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 秀士 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30322853)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 酸化物 / ナノ粒子 / 高融点人工氷晶核 / 擬似大気環境 |
Research Abstract |
「ナノ粒子」はバルク状態とは異なる新規な光学特性や物性、化学反応性を示すことから、近年、太陽電池等、様々な工業的機能性材料の創出を目指した研究が行われている。本研究ではこのナノ粒子を近年深刻さが増す異常気象を解決する人工降雨の人工氷晶核生成技術への応用を図るものである。中でも金属酸化物ナノ粒子および有機分子修飾酸化物ナノ粒子を利用して、低空での雲生成を可能とする高融点人工氷晶核ナノ粒子の探索を表面科学的に行ってきた。本年度はナノ粒子上での水吸着・凝結現象を分析する方法論として、種々の方法の検討を行った。まずナノ粒子上の水吸着・凝結現象を原子間力顕微鏡で観察する方法を検討した。しかしながら、既存原子間力顕微鏡で単純に観察するだけでは最適な実験条件を見いだすには至らなかった。そこで、冷却式露点計を改良した装置を製作し、これによる計測を試みた。観測面を冷却していき、結露を生じた時の温度を測定した。冷却には、ペルチェ効果による電子冷却を用いて、大気下で測定を行った。次に、この結果を土台にチャンバー型の密閉型容器を用いた上空大気の擬似的大気環境での測定を行う装置を考案し、(株)菅製作所の協力のもと設計・製作を行ってきた。次年度初期までにこのチャンバーの整備を終えて、実際のナノ粒子上の水吸着・凝結現象の観測を行う。このチャンバー型密閉容器による測定の特徴としては、大気下測定で採用した肉眼判定は使えないため、原子間力顕微鏡において微小な相互作用変化を検出する方法を応用した、自動平衡判定が可能なシステムを採用した。このような方法論での評価は、初めての試みであるため、測定の可否など未知なところがあるが、試験サンプル等で性能を検証しつつ、今後も実験を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究での根幹は、ナノ粒子上での水吸着・凝結現象の平衡温度の精密測定にある。この実現において当初計画では、現所属研究室の原子間力顕微鏡による測定で十分達成できると考えていたが最適な条件がなかなか見つからなかった。そこで当初計画に加えて、露点計における平衡温度検出手法を応用した2タイプの測定装置を検討した。これらを用いて水吸着・凝結現象をより明確に捉えることが期待できる。一方、酸化物ナノ粒子の合成は、別の計画研究ではあるがいくつかの調製実績があり、また購入可能でもあるので、装置整備が終わるとともに、目的の実験が遂行可能な状況である。以上から、おおむね順調に進行していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、上記のナノ粒子上での水吸着・凝結現象の平衡温度の精密測定を達成した上で、適切な高融点人工氷晶核を生成しうる酸化物ナノ粒子材料を見つけることにある。2タイプの測定装置を考案したが、それぞれに測定に対する長所があり、場合場合に応じて効率的に実験を進めたい。特にチャンバーを用いた擬似上空環境下における測定は、自身がこれまで培ってきた真空技術も駆使することで、累のない成果が期待できると考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以上のように、本研究での根幹である、ナノ粒子上での水吸着・凝結現象の平衡温度の精密測定をより効率的に行うために、当初計画にはなかったチャンバー型の密閉型容器を用いた上空大気の擬似的大気環境での測定を実施することになった。研究費は、まずこの装置の製作・整備費用に当てる。またナノ粒子調製のための試薬購入に使用する。他、海外のナノ材料に関する国際会議であるICN+T2012への出席への旅費に使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)