2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23651110
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 秀士 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30322853)
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Keywords | 酸化物 / ナノ粒子 / 高融点人工氷晶核 |
Research Abstract |
バルクとは異なる光学特性や物性示す「ナノ粒子」は、触媒、太陽電池などへの応用が盛んである。本研究はこのナノ粒子を環境問題、特に、近年深刻さが増す異常気象を解決するための手段となりえるか基礎的見地から人工降雨研究における人工氷晶核生成技術検討への応用検討を行っている。特に、環境負荷の低い酸化物ナノ粒子および有機物との混合体が、低空での雲生成を可能とする高融点人工氷晶核ナノ粒子として有効か表面科学的に検討を行ってきた。 本年度はナノ粒子上での水吸着・凝結現象を分析する方法論として、前年度に続き、原子間力顕微鏡において微小な相互作用変化を検出する方法を応用した自動計測可能なシステムの構築を行った。ここでは、ベースシステムとして日本ナショナルインスツルメンツ(株)のLabViewを採用し計測システムのプログラムを作成した。このプログラムにより、信号検出系、温度制御系および外部光制御系の入出力信号を連携制御し、時度測定を行う事ができる。これらの部品コンポーネントは検出回路を除き自作した。検出回路は、北海道大学より借用した高感度検出回路にて行う事とした。このような作業により、信号検出部の改良がまだ少し必要であるものの、高感度測定できることがわかった。さらに酸化物表面への水吸着に係る相互作用力評価として、原子間力顕微鏡による測定も併せて行った。そうしたところ、熱処理したチタン酸化物基板におけるステップ端付近で、相互作用の若干の増加を示唆する結果が得られた。この結果は、ナノ粒子のような表面に欠陥構造性を多く含む方が、水凝結現象、氷晶核生成に有利であることを意味し、研究基本方針の正しさを再確認できた。次年度は、より測定試料及びデータの拡充が重要であり、最終目標に向けて実験を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究での根幹は、ナノ粒子上での水吸着・凝結現象の平衡温度の精密測定にある。金属酸化物ナノ粒子および有機物との混合体が、低空での雲生成を可能とする高融点人工氷晶核ナノ粒子として有効か表面科学的に検討を行うために、当初計画では、現所属研究室の原子間力顕微鏡による測定で十分達成できると考えていた。しかし、本研究目的に即したパラメータの取得に最適な条件をなかなか見いだせなかった。 そこで当初計画に加えて、露点計における平衡温度検出手法を応用した2タイプの測定装置の自作を行うこととして研究を進めた。これらを用いて水吸着・凝結現象をより明確に捉えることができることを期待した。ただ、うち1つのタイプではうまく高感度検出するには至れないことがわかった。残る1タイプによる測定は、測定検出部の作成がやや工夫を要するものの、目的の実験が可能である。しかし今年度の段階においては、最終結論に至るにはややデータの累積が不足していると考えている。また、自作の装置は微小振動を検出する方式であるため、除振機構が十分でないことが判明した。そこで除振機構の整備、およびデータの補完のため、次年度も延長して行う事とした。この意味で、やや遅れているという自己評価になった。
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Strategy for Future Research Activity |
人工降雨研究で最も重要な点は、雲の種となる人工氷晶核を零下ながら、できるだけ高い温度で生成させる事である。それは降雨量の制御しやすさを実現するためだけでなく、省資源・低エネルギーコスト、環境低負荷等の観点で多くの利点がある。本研究でのナノ粒子上での水吸着・凝結現象の平衡温度の精密測定を達成した上で、最終的には大きく結晶化する過程の観察が可能でなければならない、と考えている。これに関しては、これまで自作を進めてきた装置は十分な測定レンジを持つため、達成できると考えている。これは、ナノ領域からマイクロ領域の中間のメゾ領域に関する氷結晶成長の検討であり、基礎的検知からも興味深い。ただし、前述のように現状においてはやや最終結論に至るにはデータの累積が不足していると考えている。また、自作の装置は微小振動を検出する方式であるため、除振機構が十分でないことが判明した。そこで除振機構の整備、およびデータの補完のため、次年度も延長して行う事とした。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまで自作を進めてきたナノ粒子上への水吸着・凝結現象の平衡温度の精密測定をより効率的に行う装置について、ナノ領域からマイクロ領域の中間のメゾ領域の結晶成長の検討ができる可能性があり、より精度向上のため、除振機構の整備を行う。いくつかの除振機構の選択肢があるが、現状ではパッシブ式の空気ダンパー型除振機構の導入を考えている。加えて、原子間力顕微鏡による水吸着の酸化物基板表面構造による相違をより検討するため、現在はつくば市に設置されている高精度の非接触原子間力顕微鏡を用いた実験を行うための出張旅費として支出を計画している。
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Research Products
(2 results)