2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23651115
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
孫 勇 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60274560)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 表面超電導 |
Research Abstract |
本研究の目的は、SAWデバイスを利用した高温超電導体の表面超電導転移温度の非接触的測定である。平成23年度の研究計画は、測定装置の高真空度の実現、測定自動計測システムの構築、データ処理系の動作確認及び再現可能なデータの取得である。 平成24年3月現時点では、以上の計画内容は予想以上に進展している。まず、測定装置は既に完成し、到達真空度は8×10-9Torrに達している。これは当初の計画値の10-8Torrより約一桁程高くなっている。その原因は、適切なチャンバー内壁の処理とドイツ製分子ポンプの採用によるものであると考えられる。また、自動計測システムはLabVIEW制御ソフトを採用しより自由度の大きい測定が実現している。例えば、温度の制御にはZoningができ、各zoneにおいて温度測定のステップの細かく設定やパワーの調整が実現している。更に入力信号レベルが従来の0dBm~-30dBmの範囲から+30dBm~-30dBMの範囲まで拡大できました。これは測定電界と導体中キャリア―との結合を格段に増加させたものであり、測定対象試料の範囲を拡大させたものである。 当初計画と不一致の点も生じた。まず、測定温度範囲である。当初の計画では4Kから300Kまででしたが、実現したのは10Kから400Kまでとなった。高温の方を重視し構造上低温の方を犠牲になった結果である。これは、特に本研究の遂行に支障がなく、研究終了後でも将来の研究に役に立つ考えによるものである。また、プラズマによる試料表面のクリーニング処理は実現できなかった。あまりにも膨大な予算が必要から諦めた。 計画より少ない予算で高性能を実現した部分もあった。当初測定試料とデバイス間の距離を自動制御するものでしたが、薄いスペーサ―が見つかったことで少ない予算で済んだ。雲母の壁開層の利用によって最小距離を0.1μm以下にすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
この研究は23~24年度に渡って実行されるが、23年度の計画では、計測装置の作製、テスト及び再現できる超伝導体表面伝導率の温度依存性データの取得である。現段階では、装置の作製が完成しており、装置の性能指標も概ねに達成している。また、測定実験が既に始まっており、YBCO超伝導体の表面超電導抵抗率の温度依存性に関するデータも再現性よく得られている。 再現性が従来の測定より良くなる理由として次の工夫が挙げられる。まず、真空度の向上である。従来の測定装置の到達真空度は精々1×10-7Torrでした。今回完成した装置の到達真空度は二桁も増え、約1×10-9Torrになった。これによって表面超電導特性に強く影響する表面吸着ガスの効果は劇的に減少したと考えられる。また、酸素ガス、窒素ガス、水素ガスをチャンバー内への導入も成功し、これらのガス吸着効果も表面電気電導率への影響にはっきりした違いが観測されました。その原因についてまだ検討中だが、酸素欠損に直接関係しているような関連性が認められる。 実験装置の完成と共に測定電界と測定試料中キャリアとの相互作用メカニズムの理論解明にも進展があった。表面に沿って通過する交流電界ポテンシャルは、試料への侵入深さにおける強度が違うことから、試料表面と内部に環状電流が発生し、これによるジュール熱が電界ロスの主なルートとなっている。この事実の発見によって入力信号、出力信号強度とジュール熱相関を突き止めた。 一年間の研究結果をまとめて二編の論文を作成し投稿中である。結論から言えば、実験装置が目標値で完成しており、実験結果も得られている。理論上にも新しい発見があったことなどから、当初の計画以上に進展していると結論できる。また、新しい問題点も見つかっており、残る研究期間中に問題の解決に伴う新事実の発見に繋がると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は23~24年度にまたがるが、実行計画では、23年度は測定装置の立ち上げとデーターが取得できる状態にすることである。現在のところ計画より進んでいる状態にあり、24年度では測定装置を用いて試料を測定する状況にあると考えている。 極表面抵抗率測定方法の確立について 金属系、酸化物系、炭素系をはじめとする第1と第2種材料の測定。次の順番で測定していく予定である。Nb3Al, Nb3Sn, MgB2, ビスマス系(2223), ビスマス系(2212), YBa2Cu3O7, La2-xSrxCuO4, Ca2-xNaCuO2Cl2, Be結晶、ダイヤモンド、フラーレン。真空形成に時間が掛ることを考慮し月に一個の試料を測定する。 表面超電導現象の解明と表面・界面形高温超電導材料作製法の検証について 超電導転移温度と表面音波物性との相関、転移温度と表面電子状態密度との相関、転移温度と表面磁性との相関 本測定法は弾性表面波デバイスを利用するので、表面フォノン特性の評価に得意である。薄いガス層を通じて測定デバイスの弾性波を超電導表面と結合させ、極表面層の音波物性を調べ、転移温度との相関を明らかにする。表面磁性について本研究室での測定を想定せず、既に発表されているデーターや結果などを活用する予定である。 実験と同時にデーターの取得次第、分析を行い結果の発表も同時進行する。平成24年04月から超電導体極表面の音波物性実験を開始する。真空槽の中に各種ガスの導入は、本研究室の現有設備で対応する。平成24年04月~平成25年03月の期間中においてデーターの解析、シミュレーション、表面超電導発生メカニズムのモデル構築、表面・界面形高温超電導体作製法の検証を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度では、研究のスピードを上げるために24年度予算の前倒し使用を申請しました。認められたことから、24年度に残った予算は5万円となった。この予算は国内での国際会議発表の出張旅費などに利用する予定である。 前倒しして研究の進展が早めたことを感謝している。
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