2011 Fiscal Year Research-status Report
電子放出増強による表面プラズモンのナノ分解能・その場観察
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23651121
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
宮崎 英樹 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (10262114)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / 光物性 / 表面・界面物性 / 可視化 |
Research Abstract |
本研究では、表面プラズモンが持つと期待される2次電子放出増強効果を利用して、光照射により金属表面に励起された表面プラズモンの強度分布を、電子ビーム走査により、ナノメートル分解能でその場観察する新原理顕微法の開発に挑んでいる。具体的には、現有の走査電子顕微鏡(SEM)試料室内部に、外部から導入したレーザ光により試料に表面プラズモンを励起できる光学系を構築し、レーザ光のON/OFFに対応してSEM画像の輝度が変化するかどうかを調べる。2次電子放出増強効果が確認できたら、人工的なナノ構造物における表面プラズモンの実空間・その場観察の実証を目指す。平成23年度の最大の課題として、古いSEM中にこれまでに構築していた予備的な実験システムの新しいSEM(平成23年3月導入)への移設を挙げていた。フランジ等、必要なハードウェア上の整備は進めたが、制御システムの違いが大きく、まだ新システムに完全に移行するには至っていない。従って、現在のところはすべて旧システムにて実験を行っている。また、残念ながら、表面プラズモンの励起による2次電子放出増強効果の発生を示唆する有意な信号は現時点では得られていない。そこで、2次電子の極めて微小な変化を捉えられるよう、32ビットで入力信号を扱えるよう、システムを改良した。また、当初、次年度に計画していた試料交換室を利用した迅速な試料交換システムの構築を、前倒しして実施した。さらに、本研究の遂行の過程で、電子顕微鏡と光学系を融合したシステムが種々の新型顕微鏡の共通のプラットホームとして有望であることに思い至り、入力信号の多チャンネル化や走査の高速化などの改良を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
表面プラズモンが持つと期待される2次電子放出増強効果の検証は、挑戦的な課題ではあるが、まずは現時点で有望な実験結果が得られておらず、従って、対外的な発表や特許出願に至っていない点でこのように評価した。また、低加速電圧に対応し、エネルギー分光機能を有する新しいSEMに移行できていない点でも、当初の計画に比べて遅れている。しかしながら、その検証に必要なシステムの完成度の点では、次年度に計画していた課題を前倒しで実施したり、当初計画していなかった面での改良も進めることができたので、計画よりも進展している側面もある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は、新しいSEMへの移設を大前提として計画していたが、現実にはその完成にかなりの時間を要することがわかってきたので、引き続き古いSEMでの実験を進め、その代わり、既に対応した入力信号の高分解能化などの工夫によりSEM側の性能の限界を埋め合わせる。一方で引き続き新しいSEMへの移行の準備も着実に進める。また、これまで原理検証に成功していない理由として、用いているプリズムが円筒面プリズムであり、確実に表面プラズモンを励起できる点では有利である反面、ある角度範囲で入射した光の一部しか表面プラズモンに変換されない点で不利であることも挙げられる。そこで、三角形プリズムに変更し、その代わり、高精度な角度調整が可能なシステムに作り直すことにより、最終年度内の原理検証を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
交付が予定されている1700千円の直接経費全額を物品費に用いる(当初計画は物品費1400千円、その他300千円)。具体的には光学部品、制御部品等の消耗品費に用い、原理検証に向けてシステム面での改良に全力を投入する。
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