2011 Fiscal Year Research-status Report
一細胞ゲノム解析へ向けた高性能DNA増幅マイクロチップの開発
Project/Area Number |
23651131
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
松浦 俊一 独立行政法人産業技術総合研究所, コンパクト化学システム研究センター, 研究員 (80443224)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬場 知哉 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構, 新領域融合研究センター, 特任准教授 (00338196)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | バイオチップ / DNA増幅 / ゲノム解析 / ナノ空孔材料 / 固定化酵素 |
Research Abstract |
ナノ空孔を反応場とした高効率・長寿命のDNA増幅システムを構築することを目的とし、本年度は、規則性細孔を有するナノ空孔材料(メソポーラスシリカ)と耐熱性DNA合成酵素の複合材料を用いたバッチ式PCRにおいて、ナノ空孔材料に対するDNA合成酵素の吸着挙動を解析するとともに、手始めとして、100塩基対のDNAを鋳型としたDNA増幅反応を試みた。具体的には、2.5~24.5 nmの細孔径を有する7種類のナノ空孔材料(FSMおよびSBA型)を合成し、これらシリカ材料に対するPCR用DNA合成酵素(Taq DNAポリメラーゼ)の吸着挙動の評価ならびに固定化酵素によるDNA増幅反応を実施した。その結果、DNA合成酵素はいずれのナノ空孔材料に対しても強固に吸着しており、また、FSMおよびSBA型どちらの場合も、細孔径が小さいほどDNA増幅活性が増大することを見出した。また、本系が、1本鎖DNAではなく、2本鎖DNAに対して選択的に作用することを明らかにした。 次に、ナノ空孔材料に吸着させていないDNA合成酵素のDNA増幅活性を基準にし、DNA合成酵素-ナノ空孔材料複合体の酵素活性が安定に保持されているかどうかを検証した。DNA増幅反応における繰り返し使用による耐久性評価を実施した結果、DNAの増幅効率は低下したものの4度の繰り返し耐久性を示した。 以上の結果は、DNA合成酵素が繰り返し使用可能な状態でナノ空孔材料に安定に固定化されていることを示唆している。また、細孔径が酵素より小さい場合(2.5~5 nm)に、より高いDNA合成活性が認められたことより、酵素は細孔深部に内包化されず細孔入り口付近に固定化された時に鋳型DNAと相互作用可能になることが考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年3/11の大地震およびその後の大型余震の影響により、研究インフラおよび研究機器等の復旧に時間を要したため、本年度に計画していた全ての実験項目について検討することはできなかった。しかし、1種類のDNA合成酵素と7種類のナノ空孔材料を用いたバッチ反応および繰り返し耐久性試験を実施し、複合化に最適なナノ空孔材料を見出すことができた。以上のことより、本年度の目標を80%以上達成することができたと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述の理由により、本格的な実験の開始時期が本年度後半となったため、交付申請書に記載の実施計画通りに研究を展開することが困難であり、60万円強の次年度使用額が発生した。そこで、次年度は、これまで実施できなかった実験と計画書に記載の実験を検証するために次年度分の研究費を全て充当する。具体的な推進方策としては、本年度に得られた研究成果を基に、DNA合成酵素-ナノ空孔材料複合体のマイクロチップへの固定化とDNAの流通式連続合成反応における固定化酵素の耐久性評価を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ナノ空孔材料の原料費および酵素反応解析に必要な消耗品費に加え、次年度は、マイクロチップ(プロトタイプ)の制作費が必要となる。具体的には、マイクロチップの基板となるガラスやシリコーン樹脂材料、また、マイクロ流路中でのDNA合成反応を可能にするための温度制御装置の設計と開発など、既存装置にはない、新規のマイクロチップの制作に研究費を充当する予定である。
|