2011 Fiscal Year Research-status Report
シビレエイの細胞を用いたバイオマイクロ発電デバイスの開発
Project/Area Number |
23651133
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 陽 独立行政法人理化学研究所, 集積バイオデバイス研究ユニット, ユニットリーダー (40532271)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | マイクロ・ナノデバイス / 細胞・組織 / 再生医学 / 生体機能利用 / 生物・生体工学 |
Research Abstract |
生物の基本単位である細胞は、マイクロサイズにきわめて多彩かつ高度な機能が集約されており、これを細胞のサイズに合わせた人工的なデバイスに集積化することにより、現在の技術では実現不可能な画期的なシステムを創成できる可能性を秘めている。本提案では、強力な電気を発生する器官を有する特殊な生物である電気魚の発電機能に着目した。発電細胞の利用により、従来の燃料電池とは全く異なる原理の化学エネルギーから電気エネルギーへの直接変換システムが実現可能と考えられる。本デバイス実現のためには、まず発電細胞の培養法を確立し、発電の制御法を確立する必要がある。以上をふまえ、本研究の目的は、発電細胞を集積化した発電システムの基盤創成とする。(1) シビレエイ発電の電気的特性評価 発電細胞をもつ強電気魚はデンキウナギ・デンキナマズ・シビレエイの3種が知られている。この中で、シビレエイは、他の2種に比べて電圧は劣るものの(電流は、海中においては電気抵抗が小さいため、高い)、国内における材料の入手容易さや実験の安全性を考慮すれば、最も優れていると考えられるが、これまでは発電デバイスへの利用はおろか、その発電細胞培養法すら確立されていない。まずは、発電器官の基礎評価のために器官切除・測定法を確立する必要があるが、それに先立ち、生のシビレエイの電気的特性を測定したところ、発送後一日ではまだわずかに自発電流が測定されたがそれ以降では、全く計測されず、少なくとも一日前に捕獲されたエイを使う必要があることがわかった。(2) シビレエイ捕獲量調査 安定的に実験を行うためには、エイがどの時期にどれくらいの頻度でとれるのか調査する必要がある。今回、伊勢湾付近で5漁港からどれくらいの頻度でエイがとれるか調査を行った結果、冬季(1~2月)においては少なくとも2~3日おきにはとれることがわかり、この時期では問題ないことがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、まずは安定して実験ができるための前提条件として、シビレエイの供給がドンの程度安定しているのかを調べ、場合によってはこれを安定させるべく対策を打ち必要があったのはあらかじめわかっており、まずはこれに取り組み、一定の成果をあげた。実際に捕獲量調査を行った結果、シビレエイは冬季においては安定してとれることがわかり、また捕獲後一日経過した段階でもまだ、実験には使える状態であったことが明らかにでき、実験計画が比較的立てやすくなり、当所の目的はほぼ達成されたといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年目は引き続き以下の課題に取り組む。(2) シビレエイ発電器官および細胞の培養 培地・温度・細胞外マトリクス等、培養の基礎的な部分を様々な条件で検討し、上記の方法で用意した組織切片を培養する。また、電位計測システムにより、培養時における発電性能の時間変化を計測する。さらに、任意の形状のデバイスに発電細胞を組み込むためには、組織から細胞を遊離して再播種し、培養する必要がある。そこで、トリプシン等の酵素を用いて組織から細胞を遊離する条件を確立する。同時に培養の基礎条件の検討も行い、細胞レベルでの発電細胞の培養法を確立する。また、この状態でも発電可能であることを確認する。(3) マイクロチップを用いた発電細胞のON-OFFスイッチング発電細胞のON-OFFを制御するには、神経に代わり、高い時間・空間分解能で化学刺激を制御することが必須である。そのためにはマイクロチップの利用がきわめて有効である。本課題では、電位計測用電極を組み込んだ梯子状デザインのマイクロチップを作製し、一方のチャネル内で発電細胞を培養し、もう一方から細胞刺激用のアセチルコリンを流して細流路を通して刺激し、バルブによって必要なときのみ細胞を刺激・発電可能なシステムを構築する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、実際の実験に入る以前の捕獲量調査の部分に時間を費やしたため、100万円程度の未使用分が発生したが、これは平成24年度に当所予定の分と合わせて執行する予定である。具体的には、物品費としてシビレエイ他、試薬や実験器具などの消耗品として30~50万円、調査や打ち合わせのための旅費として20~30万円、さらにはシビレエイの捕獲量調査を引き続き行うための調査費として50万円程度を計画している。執行率としては、年度末時点においてほぼ当所の計画通りを想定している。
|