2011 Fiscal Year Research-status Report
生体埋込MEMS実現に向けた液中疲労試験と無限寿命ステンレスシリコンへの挑戦
Project/Area Number |
23651137
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
神谷 庄司 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00204628)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | MEMS / NEMS / シリコン |
Research Abstract |
微小電子機械システム(MEMS)を利用した医療マイクロマシンは、人体への負担が少ない低侵襲検査治療法として、今後大きな発展が期待されている。MEMS構造体には代表的な半導体材料であるシリコンが用いられるが、生体埋込型MEMSの実用化に不可欠である生体内腐食環境下における機械的特性、耐久性や疲労特性に関する評価例は未だ数少ない。そこで、本研究は生体内を模擬した生理食塩水中での強度試験および疲労試験を行い、生体埋込MEMS の強度設計法の確立と、生体内の環境に適応した強度や疲労寿命の低下のない「ステンレスシリコン」の実現を目的とする。初年度は液中疲労試験装置の開発と水溶液中のシリコンの機械特性を調査した。さらにシリコン内部の結晶欠陥やき裂をEBIC(電子線誘起電流)で観察し、疲労過程における転位の増加と環境との関係を評価した。本年度の成果を以下に示す。1. 荷重負荷機構としてピエゾ素子アクチュエータとロードセルを、水溶液の温度制御としてヒータと温調器を組み合わせた液中疲労試験装置を設計・試作した。試作した装置を用いて純水中で静的強度試験を実施し、強度のばらつきを解析した。取得した実験結果を3種類の異なる環境下(窒素・高湿度・高温)の結果と比較し、水環境は窒素環境に比べて静的強度が20%程度低下することを見出した。2. 環境制御型SEMチャンバ内で疲労試験かつEBCI観察を実施するため、微小曲げ試験片とESEM用疲労試験装置を用いてpn 接合を設けた試料表面のエッチング面に対して圧縮曲げ疲労試験を実施した。サイクル数の増加に伴い成長する局所的なコントラストの変化を観察し、本変化が表面の酸化膜やき裂の成長によるものではなくシリコン内部に存在する欠陥の成長によるものであることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、水溶液環境に対応した疲労試験装置を構築し、微小試験片を製作した。これらを用いて純水中の強度評価を行った。ただし、試験片製作の条件出しや試験装置の改良・微調整に時間を要し、生体内を疑似した生理食塩水中の実験までは着手できなかった。これに対して、次年度計画予定のEBICを用いたシリコンの内部欠陥の挙動観察を一部先取りして実施し、繰返し応力による欠陥成長の可視化の成功など、一定の研究成果を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
試験片と水中疲労試験装置の開発を踏まえて、次年度は生理食塩水や高温水、フッ化水素などの異なる水溶液や環境条件下における耐久性や疲労特性のデータ取得のための実験を実施する。なお、上記達成度の項で述べたとおり、昨年度に基本的な動作調整で手間取った水中試験に関しては、必要な機器を全て調達・装備するに至らなかったため経費を繰り越しており、調整終了の後は速やかにこれらを手当てする。またシリコンの加工面に生じた欠陥のEBIC による挙動観察を継続し、XPSや透過電子顕微鏡等の分析装置をも併用してメカノケミカル反応解明に向けた調査を行う。具体的にはEBIC 観察を駆使して、加工によって生じた損傷あるいは疲労によって集積した転位等の欠陥を探し出し、そのポイントに対して各種分析法を適用する。さらに欠陥周辺の元素分布およびその結合状態を評価し、水中の塩分濃度あるいは溶存酸素濃度が疲労過程に与える影響、またp型とn型における電気的性質の差異による効果についても検討する。これらの観察を通して欠陥周辺で起こる物理化学的現象と欠陥の動きの関連を捉え、水中での疲労損傷の蓄積機構を解明し、それらの知見に基づいてステンレスシリコンの試作を行い、水中での強度試験と疲労試験を経てその効果の検証をすることを目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
液中疲労試験装置の製作に必要な機器一式は計画初年度にほぼ導入済みあり、次年度は十分な量の試験片の確保および改良再製作のための材料費(単結晶・多結晶シリコンウエハ)、外注加工におけるプロセス費(pn接合形成のためのイオンインプランテーションやDRIE加工)、実験データの解析・分析における外注費用(XPSや透過電子顕微鏡)等の実験消耗品が主な経費となる。
|
Research Products
(5 results)