2011 Fiscal Year Research-status Report
世代間不公平性解消のための投票制度改革-人口動態と空間に着目した分析-
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23651153
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大澤 義明 筑波大学, システム情報系, 教授 (50183760)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 隆史 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 助教 (90466657)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 選挙制度 / 選挙区 / 中位投票理論 / 人口ピラミッド / 総合計画 / コーホート変化率法 / 東日本大震災 / 人口流出 |
Research Abstract |
計量的考察を中心に行った.既存の市町村別の人口ピラミッドデータを用いて,コーホート変化率法により将来人口推定を行い,地理情報システムを用いて時間的かつ空間的に結果を可視化した.なお,自治体間に多様性があることから,また市町村ごとに1歳別人口が入手可能である茨城県を分析対象地域とした.得られた主要な結論は以下の三点である. 第一に,各自治体の年齢階層別人口を用いて ,投票者効用が年齢軸で単峰になると仮定し中位投票理論で定まる年齢座標の位置(有権者のメディアン年齢であり,均衡年齢と呼ぶ)を求めた.投票年齢引き下げや世代別選挙区の影響について,将来推計人口からメディアンを計算した.結果,茨城県常陸太田市など県北地域においてメディアンが高い水準となることを示した.また,投票年齢を引き下げの効果を検証するために,既存データを組み替え,有権者を18歳以上,16歳以上としたときの均衡年齢を求めたが,メディアンに大きな変化は生じなかった.高齢化が進みすぎているのである. 第二に,北関東3県を対象とし,コーホート変化率法による将来予測人口と,各自治体が策定する総合計画の目標人口と比較することにより,目標人口の課題推計度合いを定量的に明確にした.政治的判断も含むこのような過大人口設定が,インフラの過剰供給につながるわけであり,特に茨城県において過大となる自治体が多いことを示した. 第三に,茨城県内44市町村を対象とし,東日本大震災による現時点での人口流出の影響を分析した.被災地域である北茨城市,高萩市,潮来市において,児童を含む若い世代の人口流出により,震災前見込み推定人口と比較して,全体のメディアン,20歳以上,18歳以上,16歳以上のメディアンがかなり高まることを数値的に示した.結果,東日本大震災は短期的な影響のみならず,被災地に政策選択の高齢化を加速化せせることを定量的に示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の3点から,上記のように自己点検評価する. 第一に,研究成果の一部が論文「市町村総合計画における計画人口の過大性-北関東3県を対象として-市町村補助金制度の見直しに関する実態調査」として,査読付き論文雑誌「計画行政」35巻2号に採択される. 第二に,人口趨勢の南北格差の激しい茨城県内を分析対象とし,県内44市町村の将来人口推計をコーホート変化率法を駆使し実施し,20歳以上,18歳以上,16歳の以上人口によるメディアンを求めその一の上昇をで可視化し分析した.この結果については,平成24年9月岡山大学で開催される計画行政学会全国大会で発表予定である. 第三に,東日本大震災が地域の人口動態に与える中長期的影響について考察を加えた.この内容については,平成24年9月に名古屋大学で開催される日本建築学会全国大会に既に申し込んでおり発表定予定ある.
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Strategy for Future Research Activity |
東日本大震災の影響を受け,北関東地域全域から被災地である茨城県へ対象地域を絞ったこともあり,多少研究費を持ち越すこととなった. 本年度は理論的考察中心に進める予定である.各地域の選挙区内では,地域優先か世代優先かというトレードオフに直面する.異なる人口ピラミッドを持つ2地域にて2政策を選択する状況を考え,地域性の差異を2地域間距離の関数で選挙結果を表示する.極端な場合として,2地域が遠く離れてれば地域間距離が働き各地域の代表年齢に応じた政策が選ばれ,2地域が近ければ地域色が失われ2つの世代に応じた政策が選ばれることになる.なお,地域間距離は情報技術の進歩や空間抵抗(モビリティ)の関数と見なせるので,それらの浸透や進行といった空間を凌駕する要因の影響についても論じる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通り研究を推敲する予定である.従って,次年度の予算は,持ち越した研究費とともに,研究成果の発表旅費,理論化の計算,結果の図化のための人件費・謝金に充てる予定である.
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Research Products
(1 results)