2012 Fiscal Year Annual Research Report
基軸通貨の生成・崩壊および安定化に関する人工市場と実証による研究
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23651154
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
橋本 敬 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 教授 (90313709)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安冨 歩 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (20239768)
田所 昌幸 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (10197395)
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Keywords | 基軸通貨 / 人工市場 / 安冨モデル / 進化的価格形成モデル / 地政学的関係 / 生成・崩壊・安定化のメカニズム / 交換の普遍性 / 国際金融市場モデル |
Research Abstract |
本研究は,基軸通貨の人工市場モデル研究と政治経済学的分析・統計データ解析による実証的研究を有機的に結合し,基軸通貨の生成・崩壊・安定化のメカニズムを解明することを目的とする. まず基軸通貨の生成・崩壊・長期安定のメカニズム分析が可能な人工市場モデルの構築を進めた.物々交換から貨幣が自生・自壊すること示した安冨(2000)の貨幣モデルに流動性選好と地政学的関係を導入した基軸通貨の国際金融市場モデル(辻野・橋本,2010)を発展させ,主体(国家)間の関係性が取引活動に応じて変化する新たな通貨モデルにより動的関係性を考慮した基軸通貨の振る舞いを分析した.本モデルでは,通貨評価と取引評価を新たに設計している.通貨評価は通貨の受領性を示す指標であり,取引評価は相手が自分にとって有益な取引相手かどうかを評価する指標である.これらの指標から各主体の属性が決まり,その属性間の相対関係として国家間の関係が取引に応じて動的に変化する. 本モデルのシミュレーション実験より,通貨評価が低い主体が高い主体に近づくように大きく属性が変動し,変動が少ない主体も基軸通貨を発行する主体の周囲を回るよう動くという振る舞いを示した.これは,基軸通貨が他の通貨を惹きつけるようにして新たな関 係を構築するというダイナミクスを形成していることを意味する. この研究を発展させ,価格を考慮したモデル構築を進めた.交換の普遍性(塩沢,2004)が実現されるには,商品に対する多様な価値観が存在し,交換により互いの状況を改善できることが必要となる.しかし,安冨モデルでは商品の価値を一定と仮定しており,交換がおこなわれる基礎要件を満たさない.そこで,商品に対する多様な価値が存在する状況を考慮し,商品の交換過程から貨幣が自生自壊し,そして,価格が進化的に形成されるまでを一貫してシミュレートできる進化的価格形成モデルを構築した.
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Research Products
(3 results)