Research Abstract |
本研究は,臨床工学技士業務における個人レベルでの安全行動分析に対して眼球運動解析アプローチを適用し,技士の注意の配分方略や技能について詳細に調査すること,そして一連の調査手順を整理し,臨床工学業務における認知タスク分析の方法論の確立することを目的としている.助成期間において,病院の透析室において技士10名に対する観察を実施し,一連の透析業務を遂行する複数の技士から眼球運動および行動データを獲得した.眼球運動データについては,注意配分の効率性,確認の冗長性,注意の網羅性,そして注意対象の偏りといった4つの観点から評価を与え,各技士の違いを明らかにした.行動データについては,標準的作業手順からの乖離度合,および各要素作業の完了時間といった2つの観点で評価し,眼球運動データと同様に各技士の違いを明らかにした.ここで明らかとなった技士間の違いと,技士の経験年数(技能レベルの代用特性)の間の関係を詳細の調査することで,技士の技能と注意・行動間の対応関係について示唆を得ることができた.さらに透析装置の配置に関する要因と注意の関係について検討し,確認のために行う注視に対して装置の配置が影響を与えている可能性を示唆として得ることもできた. 上記の成果に加えて,ここで行った一連の分析手順を整理し体系化することで,臨床工学業務における技士の注意配分・情報確認の傾向を定量的に分析することを可能とするような,認知タスク分析の枠組みについても,新たに示すこともできた.
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