2011 Fiscal Year Research-status Report
双対制御論的アクティブ・セイフティ技術の提案と開発
Project/Area Number |
23651162
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
稲垣 敏之 筑波大学, システム情報系, 教授 (60134219)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 双対制御 / アクティブ・セイフティ / 車両安全確保 / 低覚醒状態検出 / ヒューマンエラー |
Research Abstract |
本研究は,車両挙動の情報のみを用いて,運転者が状況認識不全状態にあるか否かの判定と車両の安全確保という2つの目的をひとつの制御で達成する双対制御論的なアクティブ・セイフティ技術を提案しようとするものである.平成23年度は,双対制御論的アクティブ・セイフティシステムの包括的機能モデルとして,システムの制御を2段に分け,1段目で行う制御量を本来必要な制御量のα%,2段目で行う制御量をその残余分(100-α)%とし,2段の制御間の時間差をT秒,ドライバーが1段目の制御を正しく知覚して自ら制御を加える確率をp,システムの制御を運転者が正しくオーバーライドできる確率をqとするモデルを構築し,ドライバーの状況認識不全状態の検知とシステムによる安全制御の有効性を評価する手法を開発した. 国土交通省が進める第5期先進安全自動車(ASV)推進計画の「運転支援設計分科会」において本手法の基本概念を説明したところ,生理指標や顔画像評定によらず,車両制御のために計測する通常の客観情報のみによってドライバーの状況認識不全状態を検出する能力をもつ斬新なモニタリング手法であるとの評価を得,同分科会で検討を進めるべき手法の最有力候補として選定された. 現在は,必要な制御量を1段目と2段目にどのように分担させるべきか(αの設定)、2段の制御にどれだけの時間差を設けるべきか(Tの設定)についての検討を進めるため,研究室で保有している6軸動揺装置付ドライビングシミュレータを改修し、1段目の制御の大きさと2段目の制御開始までの時間差を可変にできる環境の構築を進めている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
双対制御論的アクティブ・セイフティシステムの包括的機能モデルの開発ならびにそれに基づく諸性質の基本的解析は順調に進展している.国土交通省が進める第5期先進安全自動車(ASV)推進計画の「運転支援設計分科会」において,本手法は車両制御のために計測する通常の客観情報のみによってドライバーの状況認識不全状態を検出する能力をもつものであり,ドライバー個々人の生理的・心理的特性に影響を受けないのみならず,新規センサーの設置を必要としない点が高く評価され,これからのドライバーモニタリング手法として最優先で検討を進めるべき手法として選定されたことは,予想を越える成果であったといえる.しかし,6軸動揺装置付ドライビングシミュレータの改修に必要な部品の調達に時間がかかったため,認知工学的実験の計画が当初予定よりわずかに遅れていることを考慮すると,「おおむね順調に進展している」と評価するのが妥当であると考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
わが国の自動車メーカー各社は,一様に運転支援システムの高機能化を推進しようとしているが,ドライバーが車両制御に関与すべき時間的・空間的割合が減少することに伴って運転支援システムへのドライバーの依存度が高まり,複雑な運転支援システムの機能限界の理解の難しさとあいまって,ドライバーの状況認識の品質も低下が懸念されている.また,自動車運転中にドライバーが心神喪失に至る健康起因事故もしばしば発生しており,周辺の歩行者や他車両の安全確保や,当該ドライバーが公共交通機関の運転者であった場合の乗客の安全確保のためにも,本研究が開発しようとしている双対制御論的アクティブ・セイフティシステムは重要な役割を演じることが予想され,実用化への道筋を明らかにすることが望まれている. これらのことから,本研究では,わが国の全自動車メーカーが委員として参加している国土交通省第5期先進安全自動車推進計画「運転支援設計分科会」と連携を密にしながら,現実的なシナリオを設定し,認知工学的評価実験を進める予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に導入した反力提示装置を6軸同様装置付きドライビングシミュレータに組み込むための費用が,平成23年度の研究開始時点での見込みと比べて大きくなり,23年度研究費での支払いは困難になった.そこで,平成24年度の研究費を利用してシミュレータ機能調整を行うことにしたが,24年度の研究費だけでは十分でない可能性が見込まれたため,23年度の経費のうち10万円を繰り越すこととしたものである. 24年度の研究費の大部分は,6軸動揺装置付ドライビングシミュレータの機能調整費,同シミュレータを用いての認知工学的実験にかかる費用(実験参加者への謝金)となる予定である.
|
Research Products
(3 results)