2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23651165
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
矢守 克也 京都大学, 防災研究所, 教授 (80231679)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 自然災害 / フィクション / 社会的表象理論 |
Research Abstract |
平成23年度は、東日本大震災の発生により、当初予定していた2つの研究のうち、第2研究を中心に実施した。(当初予定の第1研究は、災害事象が登場する「フィクション」の網羅的な収集、および、収集した「フィクション」の社会的表象理論の視点に立った分析であった。) 第2研究としては、実話(体験談など)をもとにした「フィクション」を、災害体験者と非体験者との共同作業による試作を試みた。具体的には、研究代表者がこれまで研究フィールドとしてきた阪神・淡路大震災の被災者の語り部団体の構成員2名の体験を、当事者と次世代(大学生など)とが共同でフィクション化する試みを実施した。これによって、実践的には、2名の震災経験者の実体験をベースにしたフィクション作品2点(電子紙芝居とビデオクリップ)を収録したDVD教材を製作し、それらと実際の語り部メンバーによるトークを組み合わせた防災教育を実施した。また理論的には、この試みの成果を生成継承論(generativity theory)の観点から考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り第2研究については、すでに実践的成果、理論的成果ともに出ており、順調に進展している。第1研究については、東日本大震災の発生により、多くのフィクション、ノンフィクション作品が、同大震災を踏まえて新作されたり、旧作が再注目を集めたりすることが考えられたため、研究開始を数ヶ月送らせたが、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
開始を延期させた第1研究を重点的に推進する。まず、災害事象が登場する「フィクション」を網羅的に収集する。この際、ディア形態においても、対象年齢においても、内容面でも、可能な限り多様な「フィクション」をとりあげる。まず、メディア形態別では、文字媒体のものとして、小説、詩歌など、映像媒体のものとして、映画、テレビドラマ、アニメーションなど、中間的な形態のものとして、コミック、漫画などを対象とする。次に、対象年齢別では、子ども対象から大人対象まで幅広く収集する。次に、収集した「フィクション」を、社会的表象理論の視点に立って、そこに登場する災害事象がどのような意味をもつ事象として描写されているかについて整理・分類を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第1研究を進展させるため、災害事象をとりあげた各種資料の収集のための経費を中心に執行する。また、地方の災害をとりあげたローカルな資料の重要性に鑑み、資料収集のための旅費も計上している。さらに、歴史・文化的な災害表象を調査する必要性があることから、この方面にかかる資料収集のための経費も計上している。
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