2011 Fiscal Year Research-status Report
ガウジ介在岩の前兆を含む破壊全過程における電磁気学的応答
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23651173
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中川 康一 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 名誉教授 (80047282)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Shear-Induced Potential / せん断分極 / 破壊予知 / ガウジ / 震源過程 / 地すべり / 地震予知 / 粘土の物理化学作用 |
Research Abstract |
多様な地盤災害の要因は岩盤の破壊によるものが大きいと考えられる。地震、地すべり、深層崩壊などには岩盤内部のすべり破壊がその素過程に存在する。地殻下部と地表付近では、破壊の場となる深度を除けば、破壊様式は非常に似ている可能性が高い。震源域では、繰り返しすべり破壊が進行してきたと考えられ、そこは断層帯となっていて、通常軟弱な粘土からなるガウジ帯を伴う破砕帯を形成している。したがって、これは地滑りや深層崩壊なども破壊面にすべり粘土を伴うことから破壊様式はよく似ていることになる。これらのすべり破壊の場となっている破砕帯は繰り返されるすべり摩擦によって、また、温度・圧力・間隙水の物理化学環境によって細粒化が促進されガウジ帯を形成する。このガウジ帯は堅固な岩体とは異なる特異な物性を示すことが分かっている。最も大きな特質はせん断分極(SIP: Shear-Induced Polarization)を示すことである。これはガウジが細粒粒子の集合体で構成されることから間隙水との接触面積が広大となり、一般的に表面が負に帯電した粒子表面と、電解質を含んだ双極性の水分子との間で、緊密な電気化学作用が働き、ガウジが変形させられると、その変形に応じて物体内部の電気的バランスが崩れ、電気的に分極すること考えられる。したがって、室内試験においては、それらの変形様式と分極様式の関係を検証する必要があり、これらを精密に計測するシステム開発が不可欠となるため、電子回路をはじめ、せん断試験の装置開発を進めてきた。これらの装置がようやく完成しつつある。一方、地すべり地でのすべり変位の分布と自然電位の分布の関係を把握する必要があるため、屋外における観測システムの開発並びに計測を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
装置の開発に以外と時間を要している。インピーダンスの高い微弱な信号検出が必要であり、既往の電子回路ではS/N比が低く、使用が困難なため新方式による装置を開発している。低雑音増幅器やフィルターなどの改善の結果、信頼性のより高い信号収録装置が、完成しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
この研究の本質は、SIP(Shear-Induced Potential,せん断分極)の存在を明らかにすることと、その応用としての、岩盤変形との関係を明らかにすることであることから、これらに向けた各ステップが重要であり、それらを着実に積み重ねていくことが研究目的を達成させるための方策となる。具体的には、室内試験では、ガウジの変形様式とSIPの発現様式の詳細な関係を記述することであり、野外においては、地すべりの変位や地震の発生と自然電位の関係を明らかにすることとなる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新しい観測ステーションの設置と観測及び自然電位発現のメカニズムの解明。新しい観測ステーションとしては、新潟県中越の伏野地すべり地と奈良県十津川地域を候補地として考えている。そのための電極とその設置、ならびにデータ収録装置の作成がある。また、室内モデル試験及び地すべり地における観測のほかに、その中間としての。小規模スケール実験も重要であるため、可能な限りこれを実施したい。
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