2012 Fiscal Year Research-status Report
ガウジ介在岩の前兆を含む破壊全過程における電磁気学的応答
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23651173
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中川 康一 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 名誉教授 (80047282)
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Keywords | ガウジ / せん断分局 / 岩盤破壊 / 粘土特性 / 破壊予測 / 地震予知 / 自然電位 / 地すべり |
Research Abstract |
地殻が変形するとき、地殻内に電気的な分極が生成されるというのが、この研究の作業仮説となっている。これはこれまでの野外観測や室内試験をもとに提案しているものであるが、その物理的メカニズムについては不明な点が多い。そのメカニズムが解明されれば、自然電位の発生メカニズムの解明に寄与するばかりでなく、岩盤破壊の予測にもつながるため、この方面の研究も大変重要な意味を持つ。 地殻上層部は拘束圧が小さいため、物質間の強度差が大きく現れ、地殻上層部の不均質な強度分布を示す。このような場において、広域応力が作用した場合、強度の小さなところで応力集中やひずみ集中が発生する。一方、岩石はこのような応力集中から応力腐食を起こし、細粒化が促進される。地殻上層部においては、熱水環境下にあり、細粒粒子表面と電解質溶液との間で相互作用によって電気的な構造が形成され、力学的にはこれが粒子間結合を生み出すと考えられる。 この電気的構造は一般に、細粒物質表面の電荷特性に大きく依存するため、粘土鉱物のような層構造を有する物質では水分子との相互作用が大きくなることが期待される。また熱水中には多くの電解質が含まれることから、負に帯電している粘土粒子表面付近にカチオンが濃集して電気二重層を形成する。結局、粘土粒子群の空間的配置に依存した電荷分布構造が最終的に形成される。完成された電気構造は電気的に均衡がとれた構造になっている。粘土粒子群からなる物体に外力が作用したとき、物体は変形するが、このとき物体の電気構造は均衡がとれた状態から、不均衡の状態に移行し、電気的偏倚が生成されると考えられる。これが、せん断分極(SIP)のメカニズムであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
自然電位観測点として、京都大学徳島地すべり観測所管轄の井川地すべりを対象に観測を継続してきた。平成23年5月に電極を埋設、信号ケーブルを敷設、観測小屋に信号処理・データ収録装置を設置してデータを摂り始めた。しかし24年の夏にデータの回収のため現地を訪れた結果、自動計測が停止していることが判明した。原因を探るため、すべての機器を宿泊所に撤収してその原因を探った。コンピュータをはじめ随所で回路が不能になっているのが確認され、落雷による過電流損傷と判断した。落雷防止のサージプロテクトを、電源に組み込んではあったが、雷は信号線に落ちたとみられる。そのため、現場での修復は不可能だったため、今期の計測再開をあきらめた。現在計器各部の修復作業と落雷対策を検討している。 室内試験においては、カオリナイトを試料片として、せん断変形による分極現象の基礎的データを得るための合理的な観測装置の開発と分極強度因子の探索をおこなった。この研究で大きな課題は電極の問題である。電極の材質によって、湿潤カオリナイトとの間で化学反応による電池を形成し、初期電位が発生するとみられる。この発生電位が、すべての電極で同じであれば、結果的に問題とはならないが、接触条件などで変化する場合、せん断によって発生する電位を分離できないので、材質の選定を十分吟味しなければならない。現在、炭素、鉄、アルミ、銅、ステンレスなどいろいろ試したが、金が一番ばらつきが少ないという結果が得られている。 SIPの発生メカニズムについては、負に帯電している粘土粒子表面と電解質溶液との間で形成される電気二重層が、外力によってせん断変形を受け、電荷のバランスが崩れるために、材質内部に電位の乱れとなって現れるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
野外観測・室内試験・SIPの発生メカニズムについて、それぞれにまだ課題が多く残っているので、これらをひとつずつ解決していきたい。野外観測においては、落雷事故による計測システムの損傷を修復し、完全回復を目指すとともに落雷対策を強化していきたい。また、データの回収を頻繁に行えれば落雷事故などによるデータ欠測期間をできるだけ短くできるが、観測地が遠方であるため困難で、テレメータシステムを導入することも考えたい。データの取れている期間の自然電位の変化を解析し、それらの原因と地すべり変位の関係を明らかにする。また、集中豪雨などで、新しい地滑りが発生した場合、計測可能な地域であれば、観測を実施したい。それらの計測システムの構築ならびに観測を実施する。 室内試験では、粘土やガウジを材料にせん断分極の発生現象を細かく調べ、破壊前後の電位変化を詳細に記載したい。SIP強度を求めるための一般性を確保するためには、計測の基準化が必要であり、検討したい。また、機会が与えられれば、共同研究施設にある地すべりのモデル実験に加わり、地すべりブロックと地山の電位変化を調べ、地すべりの変位特性や材料のスケール効果なども検討したい。 SIPの発生メカニズムについては、材料の圧密の条件、間隙水の種類などがSIP発生条件とどのように結びついているのかを調べ、そのメカニズムに迫っていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
野外観測では、計測機器の整備・調整をする必要があり、それらの電極・ケーブルなどの消耗品の購入のほか、観測ための旅費・謝金などに経費を当てたい。 室内試験では、試験材料の購入・野外での試料採取のための旅費、電子部品、試薬などが必要となる。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] Resistivity profiles and foundation structure of Central Tower, Bayon in Angkor2012
Author(s)
K. Nakagawa, I. Shimoda, S. Yamada, R. Kanai, Y. Ogawa, Y. (Yasuda) Ohta, M. Fukuda, A. Jomori, T. Takahashi and Y. Iwasaki
Organizer
Central Asian Geotechnical Symposium (IVth CAGS),Geo-engineering for construction and conservation of cultural heritage and histrical sites
Place of Presentation
Samarkand
Year and Date
20120921-20120923