2011 Fiscal Year Research-status Report
雪崩発生原因としての表面霜形成における過冷却霧の役割の実証的研究
Project/Area Number |
23651179
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
和泉 薫 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 教授 (50114997)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河島 克久 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 准教授 (40377205)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 表層雪崩災害 / 表面霜 / 弱層 / 過冷却微水滴 / 人工雪崩 |
Research Abstract |
本研究は、降雪がなく放射冷却などで氷点以下の低温状態にあって積雪表面が過冷却霧に覆われた場合、過冷却微水滴の付着による液相状態の水からの表面霜の結晶成長が急速に進行し、表層雪崩の滑り層となりうる薄い弱層が雪面に形成される過程を、低温室での室内実験及び積雪寒冷山地での現場観測から実証することを目的としている。 低温室実験では、超音波加湿器により過冷却微水滴を発生させ雪表面に表面霜が形成される微気象条件や液相状態の水からの表面霜の結晶成長過程をある程度把握することができた。しかし積雪寒冷山地での実験観測は、市販のファン付き霧発生装置(特にノズル)がマイナスの低温環境下での実験に耐えられないことが判明しその解決策を試行錯誤していて、現在凍結対策に目途が付きつつある。そのため積雪寒冷山地において雪崩危険斜面付近に霧発生装置を設置し、過冷却微水滴の付着によって斜面積雪上に表面霜を形成させる実証実験はまだ実施できてない。 申請書で述べたように本研究を着想するきっかけは、平成18年豪雪時に秋田県仙北市の乳頭温泉で発生した表層雪崩災害である。この乳頭温泉に近い仙北市の玉川温泉で2012年2月1日に表層雪崩により岩盤浴中の湯治客3名が死亡する災害が発生した。気象推移などがよく似た表層雪崩の発生であることから2月3~4日に現地調査を行った。周辺の気象状況と積雪断面の調査結果から、この雪崩のすべり層は、こしもざらめ雪の弱層であることが明らかにされ、積雪表面が日射で暖められた後に放射冷却で急冷されて形成されたものと推定された。よく似た気象推移であっても、乳頭温泉雪崩のように表面霜の弱層が形成されるためには、過冷却霧の供給量、移流風速、雪崩斜面との位置関係も十分に揃っていることが必要と考えられる。従って本研究中に積雪斜面に表面霜が形成される場合の地理的条件を詳細に調べることも追加する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、表層雪崩の発生原因となる表面霜の形成が、大気中の水蒸気の雪面への昇華凝結による気相成長ばかりでなく、過冷却微水滴の凍結・結晶化による影響が大きいことを、低温室内実験及び積雪寒冷山地での現場観測から実証することを目的としている。 低温室内実験では、超音波加湿器により過冷却微水滴を発生させ雪表面に表面霜が形成される微気象条件をある程度把握することができた。しかし積雪寒冷山地での実験観測は、市販のファン付き霧発生装置(特にノズル)がマイナスの低温環境下での実験に耐えられないことが判明しその解決策を試行錯誤している段階である。 それに加えて研究代表者が初年度途中で体調を崩し、秋から冬にかけて2回も病院に入院したこともあって、当初予定していた達成度には達していない。
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Strategy for Future Research Activity |
低温室内で超音波加湿器を使った過冷却微水滴(霧粒)の付着による液相状態の水からの表面霜の結晶成長過程を詳細に把握する。それと並行して低温室内においてノズルの凍結対策を施したファン付き霧発生装置の、過冷却霧の多量継続発生テストを行う。次冬期には積雪寒冷山地の雪崩危険斜面(のり面)付近にファン付き霧発生装置を設置し、過冷却微水滴(霧粒)の付着による主に液相状態の水からの表面霜を斜面積雪上に形成し、その後の降雪による表層雪崩発生の可能性を探る予定である。 積雪寒冷山地での実験観測は、平成24年度の1回しか行えないため、気象条件の巡り合わせによっては積雪斜面上に弱層となり得るまで発達した表面霜を形成できない可能性もある。そのような場合も考慮して、積雪寒冷山地において、過冷却霧の供給量、移流風速、雪崩斜面との位置関係から表面霜が形成される可能性の高い斜面の地理的条件を明らかにすることを研究項目として加える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
市販のファン付き霧発生装置を物品費で購入し、マイナス低温環境下での凍結対策を施してから、低温実験室内において多量の過冷却霧が継続的に発生できるようテストを行う。次の冬には積雪寒冷山地の雪崩斜面付近に同装置を設置し、表面霜の形成、及びその後の降雪による表層雪崩発生の実験観測を行う。それら低温室内実験や現場観測における協力学生への謝金や調査旅費を使用する。
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