2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23651201
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井原 茂男 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任教授 (30345136)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大田 佳宏 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (80436592)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ゲノム科学 / モデル化 / シミュレーション / 散逸構造 |
Research Abstract |
平衡状態にある少数分子の集団の熱的性質を調べることが可能になってきた最近の非平衡物理学の手法を用い、分子生物の中心課題である転写過程への適用を進めている。具体的には、転写過程で報告者らが最近見出した転写を担うポリメレース(RNAPII)間の長時間かつ大域的な協調運動に適用し、最近提唱されている数百の RNAPIIと転写関連の蛋白質群からなる転写ファクトリーの形成過程とその熱力学および情報処理のメカニズムの解析を行うことを目的とする。そのために必要な、1)RNAPIIの運動状態を決定する方程式を求め、2)実験データと比較して方程式が成立することを確かめ、さらに、3)最適なパラメータを精密に決定するという大きなブレークスルーを早期に達成することができた。その結果、RNAPIIの運動を流れとして定義し、イントロンとエクソンでのRNAPIIの速度の差が小さいときは自由流れ、大きくなると渋滞をともなった流れになること、その物理的なパラメータ条件を明らかにした。これにより、熱力学および情報処理のメカニズムの一端が明らかになった。これらの成果は米国物理学会誌Physical Reviewに投稿し受理された。さらに、転写ファクトリーの形成に必要なヒストンの可動状態を表現できる数理モデルの構築を行った。ヒストンの可動状態を考慮しつつ様々な物理量を求め、実験結果をより定量的に説明できることを確かめた。この結果も論文としてまとめ、現在Physical Reviewに投稿中である。さらに非線形性や周期性に関しても新規の結果をすでに得ており、現在鋭意投稿を準備している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、研究のボトルネックであるモデルの構築を早期に実現できた結果、予想以上のブレークスルーを早期に達成することができた。成果の一部をまとめ、投稿したところ、米国物理学会誌Physical Reviewに受理された。引き続き行った数理モデル化と具体的な実験結果への適用の結果も論文化し、現在Physical Reviewに投稿中である。熱力学的エントロピーを求める上で重要な非線形性や周期性の結果もすでに得ており、現在、鋭意投稿を準備している。この状態は、事前の準備と広範な文献調査によってもたらされたと思われるが、研究の深化を鋭意進めていける状態にある。
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Strategy for Future Research Activity |
数理物理の多岐にわたる方法論を習得し実適用し、かつ新規性を明確にし、研究を深化させるために、当初想定したよりも広範な文献調査ならびに文献の効率的な理解が研究上不可欠になった。さらに、数理モデルを具体的な解析に早期に結び付け、実験結果と比較するための解析を早期に実現するため、プログラムの改良とその検証に要する期間の短縮が課題となった。今後は、非線形物理学の方法論を引き続き転写の数理モデルに適用し、本研究の最終目標である転写の散逸構造を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の深化が大きな課題であるので、そのためには、幾つかの費用(旅費、人件費)を節約して文献費とソフト外注費、および投稿料などにあてていくことを検討しつつ研究を推進したい。
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Research Products
(4 results)