2011 Fiscal Year Research-status Report
水が誘起するタンパク質エネルギーゆらぎのパスウェイ解析
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23651202
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松林 伸幸 京都大学, 化学研究所, 准教授 (20281107)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 生体分子 / 生物物理 / 応用数学 / 計算物理 / 自己組織化 / 自由エネルギー / ゆらぎ / パスウェイ |
Research Abstract |
タンパク質構造のゆらぎに応じて、タンパク質の分子内構造エネルギーと水和自由エネルギーもゆらぐ。これらのエネルギーゆらぎを、残基ごと・2次構造ごとに局所分割し、局所エネルギーゆらぎの相関解析を行うことが本研究の目的である。23年度は、horse heart cytochrome cの平衡分子動力学シミュレーション(MD)を常温常圧で100 ns行い、100点の配座データを取り出し、各配座における水和自由エネルギーを全原子モデルで計算した。力場(モデルポテンシャル関数)は、通常のCHARMMであり、自由エネルギー計算は、エネルギー表示法を用いた。分子内エネルギー(構造エネルギー)と水和自由エネルギーの相関を調べ、相関係数が-1であることを見出した。タンパク質分子構造のゆらぎが、水和によって誘起・補償されることを示す結果である。また、水和自由エネルギーと水和エネルギー(溶質ー溶媒相互作用の平均和)の間に、線形応答理論的な相関関係が成り立つことを見出した。自由エネルギーを、タンパク質の構造単位(残基など)ごとの寄与に分割することは難しいが、エネルギーの分割は単純である。分割を必要とする本研究の進展に大事なステップである。分割を残基として、エネルギーの相関プロットを見たが、大きな特徴は見られなかった。これに対して、αヘリックスやβシートという2次構造を単位として、2次元エネルギー相関をみると、大きな相関のある組とそうで無い組の違いがクリアに表れた。エネルギー相関で特に注目すべきは、ヘムの部分とタンパク質表面である。ヘムは、タンパク質の最深部に位置し、水和はタンパク質表面に大きな影響を及ぼす。ヘム部のエネルギーゆらぎは、タンパク質表面に位置する特定の2次構造部位のエネルギーゆらぎと強い相関を持つことが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず最初に行ったことは、 horse heart cytochrome cの平衡分子動力学シミュレーション(MD)を常温常圧で100 ns行い、100点の配座データを取り出してくることである。これは、予定通りのスケジュールで進行した。次いで行ったことは、エネルギー表示法による水和自由エネルギーの計算である。100個のタンパク質配座のそれぞれについて、水をexplicitに考慮して計算した。エネルギー表示法の理論自体の改良は行わなかったが、タンパク質の自由エネルギー計算は巨大計算と呼ぶべきものであり、これを高速・効率的に行うために、エネルギー表示法による自由エネルギー計算のプログラムの大幅改良を行った。この作業は、本研究の技術的側面として重要なステップである。数倍の高速化と、計算そのものの半自動化を行い、大量の配座構造の自動解析を可能とした。そして、100個の配座データの解析に取りかかった。当初予定では、水和自由エネルギーをタンパク質構造単位(残基など)の寄与に分割する予定であったが、水和自由エネルギーと水和エネルギーの直線関係が見出されたので、相関解析は、水和自由エネルギーではなく、水和エネルギーに対して行えば良いことが分った。これは当初予定とは異なる結果であるが、解析を簡略化することのできる結果であり、当初計画以上の進展であったと言える。タンパク質分子内エネルギーである構造エネルギーの相関解析では、2次構造ごとの分割によって、明確な相関が見出されることが分った。構造エネルギーと水和エネルギーとの間の相関も、残基ごとではなく、2次構造ごとの分割が有力であることが見出された。特に、タンパク質表面のある特定の2次構造とヘムの間に相関が見出されたことは、物理的意義が大きい。しかし、その2つをつなぐパスは、未だ見出されていない。そこは、予定より遅れた部分である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に従って、2次元エネルギー相関の解析を進める。解析は2種ある。第1種は、タンパク質内の部分構造エネルギー間の相関を経由して、最後も、タンパク質内の部分構造エネルギー間の相関となるものである。第2種は、最後が、部分構造エネルギーと部分水和自由エネルギーの相関を用いて、水につながるものである。第1種は分子内ゆらぎによるエネルギー移動、第2種は、水とのエネルギーのやり取りによるエネルギー移動を記述する。水和自由エネルギーと水和エネルギーの直線関係を見出したことによって、第2種の解析が簡略化された。現在の手持ちは、2次元のエネルギー相関を記述する共分散行列である。共分散行列のみでは、パスウェイの解析には十分ではない。今後、独立成分分析および独立空間分析のような統計手法を導入する。これらの手法を空間座標のゆらぎに適用するプログラムは既に書いており、タンパク質分子に対する適用も行った。本研究にて行うべき技術的要件は、プログラムをエネルギーゆらぎに適用可能な形に書き換えることである。この書き換えを行い、その上で、cytochrome cタンパク質に適用する。見出されるパスウェイは1種類ではない可能性があるが、重み付けは独立成分分析および独立空間分析の枠内で行う。この解析がうまく行けば、当初予定にある通り、尿素混合溶媒系の解析を同様に行い、また、高温でも構造を保持するタンパク質の解析に進む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計算をより大規模に行うために、16コアの計算サーバーを購入予定である。納入は、夏までを考えている。また、プログラミングとシステム管理補助のための謝金を計上している。通年で使用する予定である。これら以外には、大量のトラジェクトリデータを保存するためのハードディスクを消耗品として購入し、さらに、研究打合せのための旅費を使用することを予定している。新規購入の計算サーバーは、RAID システム搭載型として、データの安全性を担保する。既存のファイルサーバーにも連結することで、これまでのデータと一括して取り扱うことを可能にする。プログラミングとシステム管理補助には大学院生1名と共同して行う。
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Research Products
(70 results)
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[Journal Article] Hydration structure around CO2 captured in aqueous amine solutions observed by high energy X-ray scattering2011
Author(s)
H. Deguchi, Y. Kubota, H. Furukawa, Y. Yagi, Y. Imai, M. Tatsumi, N. Yamazaki, N. Watari, T. Hirata, N. Matubayasi, Y. Kameda
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Journal Title
Int. J. Greenhouse Gas Control
Volume: 5
Pages: 1533-1539
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 分子動力学計算によるCO2化学吸収液の解析
Author(s)
古川 博敏、窪田 善之、狩野 康人、櫻庭 俊、松林 伸幸
Organizer
文部科学省「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」プロジェクト 次世代ナノ統合シミュレーションソフトウェアの研究開発 公開シンポジウム
Place of Presentation
ニチイ学館 神戸ポートアイランドセンター(神戸市中央区)
Year and Date
2012年3月5~6日
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[Presentation] Free-energy analysis of urea effect on protein
Author(s)
Yasuhito Karino and Nobuyuki Matubayasi
Organizer
The 2nd AICS (Advanced Institute for Computational Science) International Symposium
Place of Presentation
RIKEN Advanced Institute for Computational Science (神戸)
Year and Date
2012年3月1~2日
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